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揺れる心
第3章 横恋慕〜愛情か嫉妬か
新しい週が始まった。
日中は、挙式を挙げた部下が新婚旅行で休暇を取っていたこともあって、
仕事が忙しくてバタついていた。

脚のことを周りに気づかれたので、
「ちょっと捻挫してしまって…。
水曜日の夕方、通院しますので、
定時上がりしますね?」と伝えた。

水曜日は着替えを持って出勤することになり、
少し大振りのボッテガべネタのトートバッグで出勤して、
少しだけ残業してからタクシーで病院に向かうと予約時間ギリギリだった。

車を降りたところで、長身の男性とすれ違ったので、
軽く会釈をしてすれ違おうとすると、
傘を差し掛けてくれながら病院のドアを開けてくれた。

お礼を言おうとすると、
「あら!
安藤先生、忘れ物ですか?」と受付の女性が声を掛けたので、
海斗さんの義理のお兄様だということに気付いた。


「いや、足元が覚束ない感じだったので。
大丈夫ですか?」と腕を取られてしまったので、
「ありがとうございます。
もう、大丈夫ですので」と言ってぎこちなく笑おうとすると、
少し驚いたような顔で私の顔を見つめてから顔を逸らして、
「診察は?」と訊かれた。

「今日は予約のリハビリですので…」と言うと、
「お大事に…」と言って、ドアから出て行った。


受付の女性が、
「加藤さんですね?
保険証をお願いします」と言ったので、
ゆっくり受付に歩いてから渡して、
リハビリエリアに通された。

奥から海斗さんが声を掛けてくれる。
「加藤さん、奥で着替えて少しお待ちください」

ん?
加藤さんて呼んでる。

そう思ったら、
少し可笑しくて着替えながらクスクス笑ってしまった。


着替えてから椅子に座って待っていると、
再び声を掛けられて、奥のベッドに呼ばれる。

カーテンは開けたままで、
まずは施術されて、
その後、首肩肩甲骨周りのリハビリ用のストレッチを3種類教えて貰う。

「次回、出来てるか確認しますからね?」と言って笑う。

そして、小さい声で「裏の駐車場で待ってて?
雨だから車の中に入っててね?」と車の鍵を渡される。


私は頷いて着替えてお会計をしてから、ゆっくり外に出て駐車場に回った。
この前の駐車場の一番奥に車は止まっていたので、
鍵を開けて助手席に乗りこんだ。


暫くすると、コンコンと窓が叩かれた。
眼鏡をしてなかったし、
雨の水滴で外が見えなかった。
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