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揺れる心
第7章 安藤家の崩壊と再生
入籍した後に海斗さんのご両親にご報告したいという私の希望を汲んで貰って、
入籍からちょうど一週間後に安藤家を訪問した。
その日は私の誕生日でもあった。

広い客間に通される。

海斗さんと私が入籍を済ませたことと、
加藤家の養子に入って貰い、
9月から父の脳外科に入局してもらうことを、
父から報告して、
大先生からは、
この件は安藤家の家長として自分が決めたことだと重ねた。

そして、私が再婚なので、
披露宴などはせずに親族だけでささやかな挙式をと考えていることを海斗さんが続ける。

海斗さんのご両親とお兄様は、
黙って話を聴いているだけで、
暫く沈黙が続いた後、海斗さんのお父様が口を開いた。


「この度の件、大変嬉しく思います。
どうぞ末永く宜しくお願いします」

とても静かで穏やかな声だった。


ところが、物凄い剣幕でお母様がその声を遮った。

「なんなの?
どうしてこんな妾の子供が?
加藤先生、陸也さんの方が余程、キャリアもあって、
お嬢様に相応しいと思いますわ?」

すると、低い声でお父様が「やめないか!!」と言った。

一瞬、言葉を止めると、
更にヒステリックな声で続ける。

「何よ?
わたくしの実家のおかげで大学に残れたくせに!
この家だって!
それなのにあんな小娘と浮気して!
ああ、その娘、あの泥棒猫にそっくりな顔して苛つくわ!」


「いい加減にしてくれ。
うんざりだ」と、お父様が更に大きな声で遮ると、
お母様は般若のような顔で言う。

「なんなの?
その口の聞き方?
誰に対して言ってるの?
だったら、出て行って?」

「ああ。
そうさせて貰うよ。
こんなおめでたい席で、失礼極まりない物言いもする人とは、
とても一緒には居られない。
百合子さんにも酷いことを言って苦しめた。
私は、お前の顔色を窺うばかりで弱くて守ることも出来ず、
海斗にも肩身の狭い思いをさせてしまった。
海斗の掴んだ幸せを壊すことは許さない。
だから、離婚しよう。
私は出て行くよ」


周りが固まってしまう。


「ああ、大変失礼しました。
これは、私と妻の問題です。
ずっと考えていたことなので。
私が離婚しても、海斗の父親であることには変わりありません。
何もしてやれなかったけど、
心から2人の幸せを願ってます。
真理子さん、海斗を宜しくお願いします」と、深々と頭を下げた。
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