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揺れる心
第8章 突然のさよなら
海斗さんとそのお父様とお祖父様の3人との生活は、
穏やかで楽しい毎日だった。

お手伝いさんも居るので、
空いた時間には論文の英訳のお手伝いをすることもあったし、
のんびり刺繍をして過ごすこともあった。


待ち望んでいた妊娠の兆しがあった時には、
周りも本当に喜んでくださり、
特に海斗さんは泣いて喜んでくれた。


お兄様からは、電話が来ることはなかったけど、
時々、手紙というか、メモと一緒にフィルムが届いた。

几帳面な文字で、
「こちらは元気です」という簡単な一言メッセージと
日付だけ書かれた荒い手漉きのような紙。

珍しくなってしまったカメラのフィルムは、
現地では現像も出来ないんだろう。


自然たっぷりな風景
強い眼差しが印象的な子供たち
質素な麻か木綿のようなサリーを纏った働き者そうな痩せた女性たち
浅黒い肌に白い歯の男たち
質素な家や家畜たち
そして、髪と髭が伸びた陸也さんの照れ臭そうな笑顔

そんな様子が毎回、写されていた。


私からも、時折、
こちらの家族写真を送った。

甘い物が外見に似合わず好きだったとお父様から聞いて、
日持ちする虎屋の羊羹を入れてみたりもしたけど、
届いているのかすら判らなかった。

忘れた頃に、
「羊羹、美味しかった」というメモと一緒に入っていたフィルムには、
小さく切った羊羹を現地の子供たちと一緒に楽しそうに頬張る陸也さんの顔が写っていたりした。


妊娠したことも伝えると、
「産まれる頃に、一度帰国出来るかもしれない」と書いてあった。


穏やかで当たり前の日常。
少しずつ大きくなるお腹はまださほど目立たない。


百合さんも、時折お腹をそっと撫でながら、
針仕事をしてたのかしら?

そんなことを思いながら、
毎日、純白の布に少しずつ、美しい模様を白い糸でキルトしていた。

おくるみにする予定の、
軽くて薄手の小さな掛け布団サイズのキルト。

図案は、百合さんの持っていた洋書から選んだ。

百合さんが作ったものも大切にとってあったけど、
かなり傷んでしまっていたので、
そのまま使えそうもなかったから、
参考にしながら毎日それを見て刺繍をしていった。



そんな幸せな日がずっと続くはずだった。
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