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揺れる心
第9章 星空の下、愛を確かめる
30日以内の短期滞在はビザなし渡航出来るということで、
その日のうちに出発の準備をした。

陸也さんが目を丸くしている。


「えっと、お洗濯は出来るんですよね?
気温差があるのね?
取り敢えず、下着類と部屋着に、Tシャツとジーンズかな?」
と言いながら、リュックサックに荷物を詰めた。


「えっ?
これだけ?
僕より荷物、少ないね?」


「ないものは現地調達します。
ホテルなんて…ないですよね?
居候させてもらっても良いですか?」


「良いけど…
大丈夫かな?」


「大丈夫ですよ。
私、床でも椅子でも寝れますから」


「いや、そうじゃなくて…」と、
少し困った顔をしていた。


「飛行機、明日ですよね?
同じ便、取れるかな?」と、
ネットでチェックしてなんとか飛行機も押さえる。


「料理してなかったから、ほぼ冷蔵庫も空っぽだし、
いただいたお花も実家に持って行ったし…。
お薬とか、必要ですか?」


「んー。
念の為、常備薬はあった方が。
それと…ナプキンとかタンポン。
あっちは多分、酷いのしかないよ?」


少し紅くなってしまったけど、
そっと荷物に入れた。


そして、少し考えてから、
携帯と指輪と時計を外した。


「海斗からの指輪でしょ?」


「えっ?
貴金属してると強盗とかに遭うのかなって思って…」と言うと、
「そうか。
じゃあ、置いていこう」と言った。



翌日、リムジンバスで成田に向かった。


「なんか、バックパッカーの若者みたいだね?」と、
見送りに来てくださったお祖父様に笑われながら、
「行ってきます」と言って、
2人で保安検査場に入った。


まだ時間があるからと、中を歩いていると、
カルティエのショップがあった。

懐かしさと胸の痛みとで、
泣きそうになってしまった私の手を引いて、
陸也さんは中に入ると、
「なんか、指輪選んで?」と言った。


「えっ?」


「インド人ってさ、
人懐こくて、凄くあれこれ訊くんだよね?
特にこれから行く処、田舎だし。
面倒だから、真理子さんのこと、
嫁さんだって言うよ?
そうしないと、毎回、色々な人に訊かれるからさ。
だから、適当な指輪、嵌めておいてくれる?」


なんだか説得されてしまって、
ありきたりなトリニティリングの一番細いものを選んでそのまま指に嵌めて貰った。
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