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愛の証明
第1章 ドライブデートの終わりには
 彼と登山をした。登山といっても、普段の軽装で気軽に登れる低いものなのだけど。
 愛情表現豊かな彼は毎日好きといってくれて、少しメイクに力を入れれば可愛いとべた褒めしてくれるような人で、その日もいつものように愛されてデートを終えるのだと思っていた。
 これは彼の軽いと思っていた好きという言葉が、重かったと気づいた話。

「思ったよりも滑るね。坂も急になったし……」
 息を切らせながら前を行く彼にそういった。
 綺麗な景色に誘われて、ドライブデートの途中に寄り道をした。ハイキングコースを歩いている内に、どこを間違ったのか辺りは山道へと変わってしまっている。
 横が崖ではないものの柵のない狭い道に、足を滑らせれば死ぬかもしれないと思いながら、私は歩を進める。
 道を戻るという話しが出た時に、ここまで登ったのだから頂上まで行こうと軽々しく私はいった。今、その十数分前の自分を叩いてやりたい。
「もうちょっとで頂上だから、後少し頑張ろう。そこ滑るから気をつけて」
 足元の様子を見ながら、時に手を差し伸べてくれる優しい彼に助けられながら、なんとか私たちは頂上に辿り着いた。
 開けた視界に飛び込んできた景色は、秋ならではの彩りに満ちていて、思わず息をするのも忘れて見惚れてしまう。
 汗を風が撫でていき、ひんやりと気持ちがいい。
 初めて山を登った達成感は思っていたよりも大きく、疲れた足のことを忘れるくらいに高揚した。人生や苦難を山で例えることをやっと心で納得できた気がする。
 そこで少し足を休めて、私たちは山を下りだした。
 登りよりも滑り、慎重にならなければならない道に、踏ん張っている足の裏が痛む。
「あっ……」
 下りも半分位にきた頃、気を抜いてしまった私は足を滑らせてしまった。
 慌てて彼が抱きとめてくれたものの、そのままバランスを崩して二人で道を転げ落ちていく。
 ぐるぐるまわってあちこちをぶつけながら、転げ落ちていく間にこのまま何かにぶつかって死んでしまうのではないかと思っていた。
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