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第2章 夫婦なのに子供が生まれない

「ところで」
とマンコさんが話しかけてきた。
マンコさんは、国から僕の担当医師兼日常の世話係に任命されているという。
僕は出された食事、ステーキ肉とポタージュスープ、白米のご飯、野菜サラダを食べながら、彼女の話を聞いた。

「現在、人類は、未曽有の重大問題を抱えているのです。子孫を残さなければいけません」
これは非常に重大な問題だ。僕も食べる手を止めて、彼女の話に聞き入った。
「男子と女子が結婚して夫婦となると、女子が子供を産みますよね？それは、なぜでしょうか？」
とマンコさんが質問してくる。
「それは…、夫婦になると天からの贈り物で赤ちゃんがある日女子のお腹の中に出現すると思うんですけど」
と僕は、まじめに答えた。
「そう、ですよね？」

マンコさんは少し沈黙してから
「ところが、こういうことがあったんです。十年前の男子突然消失から10か月ほど経って、それまで結婚を一度もしたことが無い10代の女子が赤ちゃんを産んだんです。これは当時、世界を震撼させる大ニュースでした。結婚していないのに、子供を産んだ？？？全く不可解なありえない怪奇現象です」
と驚くべき事件を僕に教えてくれた。
「当時、世界中の医師たちがこれを解き明かそうと研究しましたが、まったくわかりませんでした。動物の夫婦、つまりつがいの行動も調べたんですが」
「動物のオスは生き残っているのですか？」
「はい。オスがいなくなったのは、人類だけのようです」
「動物夫婦の生態を調査したんですが、分かりませんでした。ただ動物の場合は夫婦で同居しない事例もあるので、それに当たるのかもという推測はあります。ただ動物も夫婦の契りを交わしてから夫婦になるはずで、この10代の女子のように夫婦の契りを交わした記憶が無いのに妊娠し出産したというのは奇怪なことです」

僕は、再びステーキを口にした。
「同じような事例は報告されていませんが、おそらく世界中にあると思います。ということは、女子単独で子供を妊娠し出産する能力があることが分かりました」
これは、世紀の大発見だ。
昔から女子は太陽のごとき存在であると言われていたのは、こういうことだったのだ。アマテラスという女神が単独で子供を産む記述があるのは、そういうことだった。
「ただ女子単独ではこの能力の発現が稀なようです。男子と結婚することで普通は発現するようなのです」