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爛れる月面
第2章 湿りの海

取り繕いようのない、不様に濁った呻きとともに、ソファを踏み外した。倒れこむ体を井上に抱きとめられる。ヌメりを残した指先に背をなぞられて、温かな湧水が噴き出し、腰が滑らかに、大胆に引き攣りっぱなしだった。
「……二週間したら、戻る予定だ」
霞む意識の中で、低い声が流れ込んできた。「再来週の土曜日だ。……残念、徹くんに先約を入れられてしまった」
腹の下で激しく弾んでいた肉茎が離れていく。まだ意のままにならない腰が浮かされ、絶頂したばかりの狭間に、ドス黒い情熱を充満させた先端が当てがわれる。
「……っ、……ね、最後……、これで最後に、して……」
「君が決めることだ」
か細い声で訴えたが、引き寄せよせられれば従ってしまう下腹に、何度目かわからない圧倒的な肉の感触が押し入った。たまらず紅美子は割り座で跨ったまま背を反らしたが、下から、動くように、と軽く催促されただけで、しなやかな肢体が上下に揺れ始める。
「っう……、おっ、お願い、さっ、最後……」
今日で最後だと思ったから、帰らずに足を踏み出したのだ。
……本当に?
窓が目に入った。内外の明暗によって、鏡となっている。
全裸の女が、縦に揺れている。長い髪を揺らして、逞しい男に抱かれている。陰影が足らず、どんな顔をしているのかは、よく見えない。
何故、こんなところにいるのだろう。どうして、こんなことをしているのだろう。ひどい目に遭い、ひどいことをしているのに、凶々しい高揚から逃れることができない。
「こ、こんなの……だめ、だって」
誰だって、やることなすこと、すべてを説明できるわけではない。
きっとそうだ。そうあってほしい。
──ただ、今は、彼には会えない。
「……二週間したら、戻る予定だ」
霞む意識の中で、低い声が流れ込んできた。「再来週の土曜日だ。……残念、徹くんに先約を入れられてしまった」
腹の下で激しく弾んでいた肉茎が離れていく。まだ意のままにならない腰が浮かされ、絶頂したばかりの狭間に、ドス黒い情熱を充満させた先端が当てがわれる。
「……っ、……ね、最後……、これで最後に、して……」
「君が決めることだ」
か細い声で訴えたが、引き寄せよせられれば従ってしまう下腹に、何度目かわからない圧倒的な肉の感触が押し入った。たまらず紅美子は割り座で跨ったまま背を反らしたが、下から、動くように、と軽く催促されただけで、しなやかな肢体が上下に揺れ始める。
「っう……、おっ、お願い、さっ、最後……」
今日で最後だと思ったから、帰らずに足を踏み出したのだ。
……本当に?
窓が目に入った。内外の明暗によって、鏡となっている。
全裸の女が、縦に揺れている。長い髪を揺らして、逞しい男に抱かれている。陰影が足らず、どんな顔をしているのかは、よく見えない。
何故、こんなところにいるのだろう。どうして、こんなことをしているのだろう。ひどい目に遭い、ひどいことをしているのに、凶々しい高揚から逃れることができない。
「こ、こんなの……だめ、だって」
誰だって、やることなすこと、すべてを説明できるわけではない。
きっとそうだ。そうあってほしい。
──ただ、今は、彼には会えない。

