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爛れる月面
第2章 湿りの海
「……イケそうか?」

 低い声。
 もう聞くことはない。

 そう、これで最後なのだ。

「っく……、ん……、ね、ねぇ、ちょっと、いい?」

 漏れてしまう喘ぎを呑んで呼ぶと、すこし、指が弛められた。

「なんだ、急に」
「わかった、こと……、あるんだ」

 井上が目を細めて見上げてくる。

「あんた、ってね……、徹の話をすると、それ、めっちゃビクビクさせんの。……可笑しい」

 何度も抱かれているうちに気づいた。さっきも、撤回して恋人と会うと言ったところから、肉幹はふくれあがり、そこだけ虚勢を張っているかのようにふん反り返っていた。繋がっているときも、恋人の名前を出すと体の中で力強く弾ね回り、一層貪欲に抉られてきた。

「嫉妬、してたんだ?」

 緩慢に抽送されていた指は、完全に止まった。

「嫉妬か……、そういうのを嫉妬っていうのか?」
「どういうの?」
「例えばこういうのだ」

 一転、指が中を激しくかき回してきた。甲高い声を上げた紅美子は、また、背もたれへとつかまった。屈んで影となった暗みから、猛烈な姦邪の眼光を浴びる。下腹で凄まじく水音が撥ねているが、痛みはない。それどころか、こめかみの鈍痛も失せ飛んでいる。

「イクみたいだな」
「……で、出るよ、また、たぶん……」
「かまわない」

 腰を更に引き寄せられ、井上の顔が脚の間へと迫ってきた。

「だっ……から、シャワー……うっ!」

 手抜きをしたつもりはなかったが、自分の指腹と、井上の唇とでは比較にならなかった。充血した雛先をたった一度吸われるや、腰が引き攣り、内またになってしまって、

「んんっ……!!」
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