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爛れる月面
第5章 つきやあらぬ

立ち上がり、彼の前に半歩進む。
「……キレイでしょ?」
「う、うん……」
「ね、はやく」
鼓動が強すぎて、夫となる人は、口で息をしている。大丈夫だろうかとは思ったが、顔が寄せられ、唇が触れ、すぐに離れようとするのを首に腕を巻きつけて阻んだ。夫となった人は、一瞬驚いたようだったが、腰を捉えて引き寄せてきた。
「ちがうわよっ、徹っ……」
徹の母親が窘めても、二人はずっと抱き合ってキスを続けた。紅美子の容美にシンとなっていた周囲からも、拍手が起こって、手拍子へとまとまっていく。
「えっと……、おい、お前ら舌入れてないか? いい加減にせんと捕まるぞ」
接面を低い位置から覗き込んだ紗友美が、密め声でツッコんでようやく、ぷはっ、と息を吐いて離れた紅美子は、徹に向けて両腕をいっぱいに広げた。
「徹、どうしようっ。……今日から私、徹のものになっちゃった!」
「クミちゃんっ!」
再び徹が抱き寄せてくると、紅美子は地を蹴って乗り上がり、
「徹っ、おっきな声で言って! 俺のオンナだーって!」
ブーケを持った手で、青空に誇らしげに聳えるスカイツリーの展望台を指した。「あそこに聞こえるくらい!」
〈完〉
「……キレイでしょ?」
「う、うん……」
「ね、はやく」
鼓動が強すぎて、夫となる人は、口で息をしている。大丈夫だろうかとは思ったが、顔が寄せられ、唇が触れ、すぐに離れようとするのを首に腕を巻きつけて阻んだ。夫となった人は、一瞬驚いたようだったが、腰を捉えて引き寄せてきた。
「ちがうわよっ、徹っ……」
徹の母親が窘めても、二人はずっと抱き合ってキスを続けた。紅美子の容美にシンとなっていた周囲からも、拍手が起こって、手拍子へとまとまっていく。
「えっと……、おい、お前ら舌入れてないか? いい加減にせんと捕まるぞ」
接面を低い位置から覗き込んだ紗友美が、密め声でツッコんでようやく、ぷはっ、と息を吐いて離れた紅美子は、徹に向けて両腕をいっぱいに広げた。
「徹、どうしようっ。……今日から私、徹のものになっちゃった!」
「クミちゃんっ!」
再び徹が抱き寄せてくると、紅美子は地を蹴って乗り上がり、
「徹っ、おっきな声で言って! 俺のオンナだーって!」
ブーケを持った手で、青空に誇らしげに聳えるスカイツリーの展望台を指した。「あそこに聞こえるくらい!」
〈完〉

