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爛れる月面
第4章 月は自ら光らない
 凄まじい快美が、全身を貫いた。肌へ痕を烙きつけられながら、不意に指に当たった肉の柱を、紅美子は両手で握りしめた。昨日別れる直前まで彼と組み合わせていた指が穢される。特に左の薬指の根元は、腐乱しているかと思うほどの熱傷に包まれている。

「……ねえっ、コレ……、早く、してっ」

 怒張が弾むたびに胸を痛くなるほど高鳴らせ、灼熱の胴を持ったまま一心に訴えた。

「まだだ」
「あっ……」

 手筒からするりと肉幹が抜かれ、下肢のすべてが浮いた。瞠くと、膝頭が顔前に迫っていた。肩を支えに「く」の字以上に体を折られ、高々と上がったヒップの向こうから、井上に見下ろされている。

「見えるか?」
「……んっ」
「見るんだ」

 促されて焦点を合わせると、逆さにされた肉果が割られ、指が二本入っていた。出入りのたびに花弁が捲れ出ている。もう一方の手がヘアの側から近づいてきて、包皮を剥き、肉芽を弾かれた瞬間、裂け目の縁が強く収縮している。

 目を離せずにいる媚丘の向こうへ井上が沈んだかと思うと、

「やっ、……そ、そこ……」

 谷道を舌が辿る。溢れ出た蜜汁に濡らされていた背後の窄まりにも、尖った舌先は触れてきた。

「めちゃくちゃにしろ、と言ったのは君だ」

 嫌悪と愉楽がないまぜに、結びが収縮と弛緩を繰り返す。雛先を弄っていた指が襞道へと取って代わり、場所を譲ったばかりのずぶ濡れの指先が巾着を広げてくると、

「や……、い、いくっ……」

 指先に括約筋を擽られ、上躯へ温かい飛沫が散った。腰を井上にしっかりと固められ、断続的に訪れる痙攣で踵を空に泳がせ、膝をついている井上の脚を爪を立てて搔き毟り、苦しい体勢なのに、いや、だからこそ、猛烈な喜悦が全身を跋扈した。
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