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爛れる月面
第2章 湿りの海
 体の最奥に沸き起こった兆しに慄然となり、紅美子はトイレの中に声を響かせた。もはや添えているに過ぎなかったスカートの裾を捨て、両手を振り上げて胸板を力いっぱい押す。

 井上の指が止まった。

「誰か来るぞ」
「っ……、来たら……、もっと大声出してやる……」
「そうか。それは楽しみだ」
 スカートから手を抜き取った井上は、「君がこんなところで触られて、悦んでたのがバレるだけだ」
「誰がそんな……、……っあ!!」

 言うが前に、井上は足元にしゃがむと、片手で腰を抑え、もう一方の手を真下からこじ入れた。柔丘を手に包むようにして、ゆるやかに解してくる。親指の根を使って巧みに肉蕊を擦り、かつ折り曲げられた指と伸ばした指が協調して、薄布の上からクレヴァスを撫でてくる。

「や、やめ……」

 肩を突き飛ばせば、便器の上にもんどりうって転ばせることができるのに、紅美子の両手は置かれただけで、それ以上の力を加えることができなかった。それどころか膝は内側に折れ、井上の支えがなければ、紅美子のほうが崩れ落ちそうだ。

「……濡らしてるな」
 長い髪を横に振るう。「隠そうってのにも無理があるだろ。こうして触ってるんだ。嫌でもわかる」

 スカートの中で、井上の指と扉目のあいだに、湿った小撥ね音が立っているのが、空気を伝わらずとも身肉を伝わってきていた。唇が隠れそうなほど真一文字に結んでも、狡猾な指が送り込む振動が、奥地の分泌を促してくる。腐心するあまり、異変を感じたのは、腰を支えたままスカートのホックが外されて、足元に落とされた後だった。ストッキングに包まれた長い脚と、ショーツに彩られた引き締まった下腹が剥き出しにされる。

「ちょ……、な、……なに、すんの……」
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