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爛れる月面
第2章 湿りの海
「ンッ……」
「その爪じゃ、むやみに弄るのは危険だからな」
「だから、そんなこと、しな……うあっ!」

 入口付近で小音を立てていた指が、奥まで進んできた。この数日のあいだに発掘された、紅美子も知らなかった局点を圧しこんでくると、よろめいて股ぐらから離した手を背凭れに手をついてしまう。

「何をしてる」
「だ、だって……」
「触れよ」
「あんたが、してるんだから、もういいじゃん……」
「触るんだ」

 弱点から指が離れて、ゆるやかに前後する動きに変わる。井上に見上げられると、背すじが筆になぞられたように反り、紅美子は再び手を下腹へと戻らせた。今度は井上の補助はなく、指先がひとりで、ヘアのほうから体の中心線に沿って伝い降りていく。触れた瞬間、蕊先から散り広がる快美は、関節の背で擦ったときよりもはるかに鮮烈だった。

 井上の指が二本に変わった。ニチッ、ニチッと鳴らされるのに合わせて、肉蕊を捏ねては弾く。臍穴を舌先に穿たれると、擽ったさを飛び越えた疼きの波が、より股ぐらの感度を上げた。

「ここに足をつけ」
「やだよ。で……、できるわけないじゃん」
「イジってるところが見たいんだ」
「っ……、変態が……」

 まともなら、とてもできない。

 だが、紅美子は、井上の指示した先、ソファの縁へ片足を踏んだ。当然、長い脚は大きく開かれ、井上との間に遮るものは何もない。

「んんっ!」

 特別、触り方を変えたわけでもなく、触られ方が変わったわけでもなかった。だが、そこが視線に刺された瞬間、膣壁は発作を起こしたように蠕動し、鳴っていた音に水分が混ざり込んだ。指の動きを速めてしまう。井上の指が、もっと速めろと言わんばかりに急かしてくる。
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