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時と運命の調律者
第1章 セラフィムの内乱
そこに人影は無かった、ただ煤と埃とに塗れた廃墟群が、どこまでも軒を連ねるだけだった。
空には厚い雲が立ち込め、今にも雨が降り出しそうだ。
もうすぐ日が暮れる時間帯だ、繁華街の方は人波でごった返しているだろう事は容易に想像できる。
「はあ、はあ・・・」
ガリア帝国首都“ルテティア”の旧市街地東地区ー。
周囲を切り立った崖と大河セーヌに覆われているここは、外敵に対しては非常に堅牢な一大城塞群であると同時に皇帝一家の直接治める宮城都市でもあったのだ。
歴史ある花の都ー。
エウロペ連邦文化圏に所属している他の国々からは尊敬と羨望の眼差しを向けられる、ルテティアの内側ではその名に恥じぬほどに煌びやかな貴族文化が花開き、毎晩のように豪勢な宮廷晩餐会が催されていた。
そんなガリア帝国を創成以来より裏から支えて来たのが世に言うハイウィザードと呼ばれている優れた賢者達の一団だ。
彼等は幼い頃から皆、その才能を見いだされては秘密裏に国によって保護され、早ければ六歳、遅くとも十歳を迎えるまでには親元から引き離される。
そして魔法使いや霊能力者を育成するための専門教育機関“セラフィム”に入学させられ、そこで寮生活を送りながら厳しい修練を積み重ねて行き、一握りの者はハイウィザードとしての叙勲を受け、それ以外の者達は街角で呪い師として人々を導いたり下野して一人、好きな研究に打ち込んだり。
またある者は人に仇なす妖魔やモンスター、心理的異常者や屈強なシリアルキラー等から一般国民をガードする“ミラベル”と呼ばれる組織に所属して日夜、任務に明け暮れる。
少年はその幾つかある内の一つ、セラフィムに属していた。
よく絞り込まれているその肉体はしかし、その実非常に屈強でしなやかな筋肉に覆われており骨格も太くて頑丈だ。
漆黒の長い癖っ毛の髪を後ろで束ね、それと同色の、黒曜石の瞳で前方の空間を注意しつつ見据えていた。
「はあ、はあ。なんでだよ、なんでこんな・・・」
独りごちながら、息を切らせて駆けて行く少年の身体能力は、しかし実際には中々のモノだった、自らの中に絶え間なく流れる、宇宙の深淵から溢れ出る生命の大いなる練りの流れ、“波動”をまだ未熟ながらも上手くコントロールして肉体を活性化させ、俊敏な動きで旧市街地の外縁部分を駆け抜けて行く。
空には厚い雲が立ち込め、今にも雨が降り出しそうだ。
もうすぐ日が暮れる時間帯だ、繁華街の方は人波でごった返しているだろう事は容易に想像できる。
「はあ、はあ・・・」
ガリア帝国首都“ルテティア”の旧市街地東地区ー。
周囲を切り立った崖と大河セーヌに覆われているここは、外敵に対しては非常に堅牢な一大城塞群であると同時に皇帝一家の直接治める宮城都市でもあったのだ。
歴史ある花の都ー。
エウロペ連邦文化圏に所属している他の国々からは尊敬と羨望の眼差しを向けられる、ルテティアの内側ではその名に恥じぬほどに煌びやかな貴族文化が花開き、毎晩のように豪勢な宮廷晩餐会が催されていた。
そんなガリア帝国を創成以来より裏から支えて来たのが世に言うハイウィザードと呼ばれている優れた賢者達の一団だ。
彼等は幼い頃から皆、その才能を見いだされては秘密裏に国によって保護され、早ければ六歳、遅くとも十歳を迎えるまでには親元から引き離される。
そして魔法使いや霊能力者を育成するための専門教育機関“セラフィム”に入学させられ、そこで寮生活を送りながら厳しい修練を積み重ねて行き、一握りの者はハイウィザードとしての叙勲を受け、それ以外の者達は街角で呪い師として人々を導いたり下野して一人、好きな研究に打ち込んだり。
またある者は人に仇なす妖魔やモンスター、心理的異常者や屈強なシリアルキラー等から一般国民をガードする“ミラベル”と呼ばれる組織に所属して日夜、任務に明け暮れる。
少年はその幾つかある内の一つ、セラフィムに属していた。
よく絞り込まれているその肉体はしかし、その実非常に屈強でしなやかな筋肉に覆われており骨格も太くて頑丈だ。
漆黒の長い癖っ毛の髪を後ろで束ね、それと同色の、黒曜石の瞳で前方の空間を注意しつつ見据えていた。
「はあ、はあ。なんでだよ、なんでこんな・・・」
独りごちながら、息を切らせて駆けて行く少年の身体能力は、しかし実際には中々のモノだった、自らの中に絶え間なく流れる、宇宙の深淵から溢れ出る生命の大いなる練りの流れ、“波動”をまだ未熟ながらも上手くコントロールして肉体を活性化させ、俊敏な動きで旧市街地の外縁部分を駆け抜けて行く。