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時と運命の調律者
第5章 メリーニ・カッセ
「いやー、悪いね蒼ちゃん」
「良いんですよ、今日は割かし暇でしたから。それに僕も久々に街に出られて嬉しかったですし・・・」
そんな雨空の下を、蒼太は斉藤さんと一緒に傘を差して歩いていた、今日はちょっとした所用があって、新宿まで来ていた斉藤さんに誘われる形で蒼太もまた、この大都会の中心地へとやって来ていたのだ。
「それにしても、やっぱり新宿って凄いのねぇ、久々の人混みで酔っ払っちゃったわ」
「僕もです、さすがにここまで多いとは予想していませんでしたね」
そう応えつつも蒼太は内心、“危ない所だった”と胸を撫で下ろしていた、実は「正直、人混みが苦手で。だから面食らっちゃいました」と言おうとしていたのだ。
しかし直前で“ちょっと待て”と思い直した、そんな言い方をしたら、せっかく誘ってくれた斉藤さんに失礼になるではないかと、そう直感したのだ。
(いけない、いけない。しっかりしろ蒼太。疲れている訳でも無いだろ!!)
こんな所をメリーに見られでもしたら、また怒られてしまうかな、等と可愛い幼馴染みとの思い出を省みて、クスクスと笑みを浮かべていた、その時だった。
ふと、何かを感じて思わずそちらを凝視してしまうがそこは、ビルとビルとの隙間だった、普段なら“何の変哲も無い場所だ”とばかりに無視して通って言ってしまう、錆びた伽藍堂でしかなかった。
しかしその日は違っていた、蒼太は見逃さなかった、その狭間の一角にいた、雨に濡れながらしゃがみこんでいる少女の姿を。
それは先程の、黒のドレスを着用し、黒いブーツを履いていた、あの黒髪の少女だった。
「・・・メリー!?」
「・・・蒼ちゃん、どうしたの?」
「いえ、ちょっと・・・」
「良いんですよ、今日は割かし暇でしたから。それに僕も久々に街に出られて嬉しかったですし・・・」
そんな雨空の下を、蒼太は斉藤さんと一緒に傘を差して歩いていた、今日はちょっとした所用があって、新宿まで来ていた斉藤さんに誘われる形で蒼太もまた、この大都会の中心地へとやって来ていたのだ。
「それにしても、やっぱり新宿って凄いのねぇ、久々の人混みで酔っ払っちゃったわ」
「僕もです、さすがにここまで多いとは予想していませんでしたね」
そう応えつつも蒼太は内心、“危ない所だった”と胸を撫で下ろしていた、実は「正直、人混みが苦手で。だから面食らっちゃいました」と言おうとしていたのだ。
しかし直前で“ちょっと待て”と思い直した、そんな言い方をしたら、せっかく誘ってくれた斉藤さんに失礼になるではないかと、そう直感したのだ。
(いけない、いけない。しっかりしろ蒼太。疲れている訳でも無いだろ!!)
こんな所をメリーに見られでもしたら、また怒られてしまうかな、等と可愛い幼馴染みとの思い出を省みて、クスクスと笑みを浮かべていた、その時だった。
ふと、何かを感じて思わずそちらを凝視してしまうがそこは、ビルとビルとの隙間だった、普段なら“何の変哲も無い場所だ”とばかりに無視して通って言ってしまう、錆びた伽藍堂でしかなかった。
しかしその日は違っていた、蒼太は見逃さなかった、その狭間の一角にいた、雨に濡れながらしゃがみこんでいる少女の姿を。
それは先程の、黒のドレスを着用し、黒いブーツを履いていた、あの黒髪の少女だった。
「・・・メリー!?」
「・・・蒼ちゃん、どうしたの?」
「いえ、ちょっと・・・」