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時と運命の調律者
第5章 メリーニ・カッセ
 側にいる斉藤さんが怪訝そうに声を掛けるがその時の蒼太はそれにキチンと応じる余裕もなく、何かに引き寄せられるように少女の元へと吸い寄せられて行った。

「・・・きみ、ねえきみ。大丈夫?」

「・・・・・」

 その声に、少女はゆっくりと顔を上げた。

 視線と視線が交わり合う。

「・・・・・!!」

「あ、あうっ!?あうぅぅぅ・・・っ!!!」

 バッと、弾かれたように少女が蒼太に抱き着いた、うえーん、うえーんと、大きな声で泣き喚きながら。

「・・・・・!!!?」

「・・・うた、そうた!!」

 一頻り泣いたあと、絞り出すような声でそう告げると、少女はようやく落ち着いたのか、ゆっくりと手を離した。

 突然の事に、思わず呆然としてしまった蒼太は我に返ると改めて少女を見つめる。

 その表情は疲れ切り、弱々しかったがしかし、その瞳にはどこか強い輝きがあった。

 何より雰囲気が瓜二つだったのだ、・・・彼の初恋の、ハチミツ色の髪の毛をした、青空色の瞳の少女に。

 しかし。

(おかしい。一瞬、確かにメリーの影を、気配を感じたのに。この娘は全然似ていない、髪の毛の色も、瞳の色も違う。歳だってうんと下だろう、しかし何故・・・!!?)
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