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凌辱のストーリー~雌犬に堕ちていく「涼子様」
第5章 千円札
車が「山岡啓造事務所」の前に着くと、田代は素早く運転席から降りて、後部座席のドアを開けた。

涼子に福祉施設の件で権利を取られてから、只でさえ怒りやすい性格だったのが、いつ爆発するか分からぬ程荒れていた。

少しでも動作が遅いと、猛烈なカミナリが飛ぶのだった。

おまけに啓造は柔道の有段者なので、本気で怒らせるとヤクザもビビル程であった。

啓造はそのがっしりとした上半身を乗り出すように降りると、ズボンのポケットから分厚い財布を出し、そこから紙幣を一枚抜き取ると田代の顔に差し出した。

「ホラ、昼飯でも食ってこい。」

「有難うございます。」

田代は幾分大げさに紙幣を両手で受け取ると、素早くポケットに入れた。

「ふん・・・。」

啓造は一瞥をくれると、事務所の玄関に向かい歩き出した。

田代はその後ろ姿を、苦々しい気持ちで見送っている。

(ヘッ、たった千円ぽっちで、一々、頭を下げさせられちゃあカナワねーぜ。)

これは、毎日二人で行われる儀式みたいな物であった。

当初は山岡の気前の良さに感動した田代ではあったが、よくよく考えてみると給料はさして上がらず、月に数万円の小遣いのために、屈辱を舐めさせられているようなものであるからだ。

それは啓造にも計算済みで、こうする事によって誰が「ご主人様」であるかを自覚させる効果があるのだ。

しかし田代にしてみれば涼子との一件以来、始終不機嫌にムッツリしている啓造に仕えるのは相当な苦痛であった。

以前はよく飲みに連れていってくれたのに、最近はその御褒美もない。

これでは「飼い犬」としてはやっていけないと、思っているのであった。

今日も啓造に呼び出されるまでジッと車の中で待機しているかと思うと、やりきれない思いがするのである。

どんなに遅くなろうとも、残業代などはつかないのである。

夕飯抜きの日などザラであった。

だから突然、大きな啓造の背中が振り向き今夜飲みに行くと言われた事に、まさに飼い犬のように嬉しそうに返事をするのであった。

啓造と飲む時は「付録」がつくのだ。

しかも極上のご褒美であった。

これがあるから啓造についていけるのだ。

金欠とストレスで、もてあまし気味の田代は今夜の「御褒美」を思うと、思わずニヤついてしまうのだった。
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