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第26章 バックミラー

日本に来てからの涼子は孤独だった。

夫は忙しく、二人きりの時間も減り友人も少なかった。

いや、実は生まれた時からそうだったのかもしれない。

厳しく躾られ誰からも愛され尊敬される「涼子様」としての人生に怯え疲れていたのかもしれない。

こうして全てのプライドを脱ぎ捨てメス犬としていたぶられると、何とも言えない充実感が沸き上がるのだ。

「んっ・・・んっ・・・・んんっ・・・。」

リズミカルに上下する端整な顔の動きに合わせて、黒い首輪がカチャカチャと音を立てていく。

何度も見た光景であるのに、理恵は興奮を押えずにはいられなかった。

普段の気品に満ちた「涼子様」を知っている自分にとっ、て獣に変身していく様は想像を超えていた。

そして理恵も心を変えていく。

何不自由なく育った両親を欺き山岡の愛人として豪華なマンションに住んでいる。

涼子と同様、普段は真面目な大学生である。

それが一旦、山岡の手で本性を暴かれると一匹のメス犬として淫乱に燃えていく。

理恵もマゾの喜びを知ってしまった。

どちらかと言うと気の強い性格だった理恵、は山岡の愛人になった後でも従順に仕えたりはしなかった。

浮気こそしなかったが、山岡の愛を対等に受けとめる姿勢は崩さなかった。

涼子を罠にかけるのを手伝ったのもその美しい魅力に引かれたからなのだ。

そして他人を罠にかけるという不条理なスリルに興奮したのだった。

それが涼子の調教を真近で見る内に、自分の心の奥底からも支配される欲望が沸き上がるのが感じられた。

改めて男の魅力に取りつかれたのだ。

別の意味で山岡の巧みな調教であった。