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あなたが消えない
第2章 永遠の仲
「ごっ、ごめんなさい。私たち悪気があった訳じゃなくて…」

ドキドキから一転して、指先が震えてしまった。

「えっ?やだな、何の事です?どうしたんですか?顔色が悪いですよ?」

永津さんは満面の笑みを浮かべていた。

「102号室のご夫婦も共働きでね、とても静かなご夫婦なんですよ。うちも妻がお産のため、遠山さんが来られる2日前から実家に戻っていましてねぇ、しばらく僕は一人住まいなんです」

「そっ、そうなんですか」


何だ、やっぱり結婚してるんだ。 しかも、もう子どもまで居るのか…。

「このアパートは築が若干古いから、この先々騒がしくなるかも知れませんが、その辺りは先程の永遠という仲で、御承知頂けたらと思っています」

「あっ、はい。あの、とんでもないです…」

この人は私と仲良くしたいのか、したくないのか、どっちなんだろう。

でも、永津さんの瞳は一寸たりとも揺れ動く事もなく、私を真っ直ぐに捕らえていた。

…どうして、視線をそらしてくれないの?

そんなにイヤミばかり言うなら、早くそらしてよ。

私も永津さんも、同じ表情で数秒間、見つめ合った。

……。

すると永津さんは私に一歩だけ近寄るから、私はそのタイミングで視線をそらした。

「と言う事で、改めて今後とも宜しくお願いします」

さっと、手を差し出された。

「はい。…お願いします」

いいのかな、手を握っても…。

私は永津さんの手に自分の手を重ねると、ギュッと強く握り締められた。

痛いくらいに、痺れるくらいに…。

それは手だけじゃなくて、心すらもそれで麻痺させられているようだった。
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