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あなたが消えない
第1章 憂鬱な日々
私は結婚を期に地元を離れて、新築アパートを借りて生活をしていた。

しかし、隣りに住む若いバカップルの深夜まで続く騒音に疲れ果てた。

旦那の和男(かずお)に何度も相談をして、やっとの思いで一年で引っ越す事になった。

ワガママだと、和男や和男の両親に責められた。

ズボラな性格の自分が、あそこまで神経質になるもんなんだと、自分でも驚く程だった。

今度の新居のアパートは築は10年経つものの、周囲は昼間も夜も静か。

何より空室、住んでる家も3軒。

あんまり人付き合いもしたくないから、丁度いい。

2階の角部屋という理由が条件だったので、多少不便でも私には充分だった。

荷物を新居に入れ込む。

「こんな市街地から離れた、駅からも遠いとなりゃ住む人間も少ないはずだ」

和男は、無神経に言う。

「そういう事、言わないの」

「もう二度と引っ越しは御免だぞ」

「はいはい」

私はカーテンを取り付けていた。

「結局あれだろ。おまえは俺と俺の両親が決めたアパートが気に入らなかっただけなんだろ?」

嫌な言い方。

コイツ時々うざったいと思うんだよね。

「違うってば。ほら、こっち持ってよ」

カーテンのはじを差し出す。

「やだね。おまえの選んだ部屋なんだから知らねぇよ。何でも自分でやったら?」

うわっ、最悪。

引っ越した事、完全に根に持ってる。

怒りたいけど、我慢しなきゃ。

しばらくは、和男の言いなりになるしかない。
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