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モーニングコーヒー
第9章 レベル9〜りんさんのスペック、あるいは思いもよらないスキル
前夜に配信した動画のコメント欄を読もうとして、
俺は正直、驚いてしまった。

ゲームのまとめ動画と同じかそれ以上の視聴回数だった。

コメントの量もあり得ないほど多くて、
すぐには読み切れない数で、
コメントを返すのも大変そうな状態だった。


これは…。
今夜の生配信のチャット、
荒れそうだな…と思いながら、
どの辺りまでやるかを決めつつ、
軽く動作確認も兼ねて少しゲームをやってみる。

勿論、別アカで取ってる方のキャラでだ。
昨日今日とコントローラーに触ってなかった。
多分、そんなのはここ数年で初めてだったけど、
まあ、普通に手は動いていた。


念の為にと、
お礼用のショート動画を、
アニメーションで作っておくことにした。





夕食のポトフは、
いつ仕込んでいたのかも判らなかったけど、
凄く美味しかった。

パンは道場の帰りに食パン専門店で買ったもので、
何もつけなくても甘みがあって美味しい。

食後のコーヒーは俺が淹れて、
食器は秀人も手伝って下げていた。


「配信…観てても良いの?」とりんさんに訊かれた。

「良いけど…今夜の処は、怖いトコだよ?」と言うと、
「じゃあ、今夜は辞めておきますね。
部屋で刺繍してます」と言った。


「僕は観てようかな?」と秀人が笑った。


防音室からの配信は、
これまでのマンションより快適だった。

本当にスタジオみたいだ。


ゲームの進行は順調だったけど、
チャットはやっぱり、
常連さん中心に、
結婚のお祝いコメントやらスパチャも飛び交っていた。


これまでで一番凄い金額になりそうだった。


配信が終わった後、
リビングに戻ると、

「スパチャってなあに?」と、
りんさんが俺に訊いた。


「んー。
投げ銭みたいなもんかな?
普段は、そこまでないけど、
今日は凄かったな」と言うと、

「お祝いってこと?
じゃあ、お礼を言わないと!
それに、お祝い返しとかは?」


「スパチャは一方通行だから、
お祝い返しは出来ないかな?」


「じゃあ、せめて、
お礼を言わないと!」


「えっ?
一応、ライブ配信中に名前を呼んでお礼は言ったよ?」


「それで良いの?
私も言わなくて大丈夫?」


「んー。
名前、呼んであげたら喜ぶかもしれないけど」


「じゃあ、お礼を言いたいです」
と、りんさんは真剣な顔で言った。
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