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モーニングコーヒー
第5章 レベル5〜プロポーズ
「ふーん。
ヤクザな仕事を、ヤクザの仕事と勘違いして、
会社辞めるって言っちゃって、
それはもう、確定なんだね。
でも、住む家はあるし、
退職金とかも多少は出るから大丈夫なんじゃない?」と、
秀人が冷静な顔で言う。


「入学金と学費は、
父さんに出して貰えるかな?
ダメだったら、別に大学行かなくても良いよ」


「あら。
学費くらいは大丈夫よ?
離婚する時に財産分与されたし、
慰謝料も出たし、
それ、使ってないもの」とりんさんは笑う。


「でさ、ヤクザな仕事って、何?」と、
秀人が核心に迫る問い掛けをしてくる。


これ、言ったら、
りんさん、もう、俺との将来を考えてくれなくなるかな?


そう思ったら、
胃が痛くて、
吐きそうになってきた。





重たい沈黙が続く。


「えっと、ヤクザさんではなかったの。
背中に龍のタトゥーとかもなかったし。
それは、ちゃんとこの目で見たわ?」とりんさんが笑う。


「昼間はカフェで、バイトしてる。
学生時代から、ずっと。
平日の朝7時から夕方5時まで。
土日は休みにしてて…」


「それは別に、
ヤクザな仕事じゃないよね?
まあ、給料は安そうだけどさ」


「カフェ以外の時間は…
家でパソコンとかで仕事してる」


「在宅ワークか。
別に、それ、
普通の仕事でしょ?」


「…普通ではないかもしれない。
それに、会社勤めでもないから、
不安定で…」


「会社勤めじゃないってことだと、
どこから収入、得てるの?」


りんさんはずっと黙って聴いているだけで、
秀人がするどく質問してくる。

尋問されてるみたいだな。



「企業から案件貰って検証したり、
リポート出すこともある」


「それだけで、食えるくらい収入あるの?」


「まあまあ、貰えてる」


「だったら、別にヤクザな仕事って訳でもないじゃん。
フリーランスで仕事請け負ってるから、
個人事業主ってことでしょ?」


「…でも、
多分、りんさんからしたら、
一番嫌いな仕事かもしれない」


「えっ?
私が嫌いな仕事?」


りんさんは、心の底から驚いたような顔をする。


秀人も、
「どういうこと?」と言う。


どうしよう?
ここで言わないといけないよな?
でも、そしたら、これで終わるかもしれない。
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