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モーニングコーヒー
第8章 レベル8〜ちょっと哀しい昔話
先輩が帰った後、3人でりんさんの淹れた焙じ茶を飲みながら少し話をした。


「駿さんのお父さんって、
偉いの?」
と、秀人が訊く。


「んー。
世間一般的にはそうかもな。
でもさ、頭が固くてね」と笑う。


「医者なんでしょ?
しかも、大学教授って、
開業医より偉そうだな」


「りんさんのお父様も、脳外科医って…。
びっくりした」


「そういえば、話してなかったかも」と笑う。


「でも、グランパは、
無理矢理ママを医者になんて言わなかったでしょ?」


りんさんは笑いながら言う。

「だって…血を見て卒倒するようじゃ、
とても無理でしょ?
好きなことしなさいって言ってくれてたし、
安全な日本で教育受けなさいって…」


「安全?」


「だって、ブラジルに居た時は…
銃を持ったガードマンが門に立ってるようなトコだったし、
アメリカだって、場所に依っては危険だったもの。
私もママも、誘拐されそうになったこと、あったんですって」


「うわ。
ガチな危険か」


「駿さんは、どうして医学部、辞めたの?」と、
秀人が訊く。


「んー。
逃げたのかな?」


「逃げた?」


「俺のミスで、
他人が死んだり、
障害を負ったりするとか…
怖くてさ。
だったら、他人を助ける仕事が良いなって思って、
法学部に転部した」


「ふーん。
そうだったんだ」


「でも、試験受かった直後に、
ばあちゃんが倒れて、
その後、本人の希望で自宅療養になってさ。
俺のことでオヤジとばあちゃん、
仲違いしてたから、
俺が看てあげるしかなかった。
だから、司法修習生になるの、諦めたんだ」


「そうだったの…」


「でも、そのおかげで、
『ソルト』になれたよ?
家にずっと居て、ゲームに取り組めた。
記憶力の良さがすごく役立ったし、
高校までやってた剣道のおかげで、
反射神経と動体視力も他人より良かった。
ヘルパーさん来る昼間だけ、
バイトに行ってさ。
ばあちゃんは1年前に亡くなったけど、
ずっとバイトしてたおかげで、
りんさんにも会えたし。
ばあちゃん亡くした頃、
『顔色悪いけど、大丈夫ですか?』って言われたこと、
今でも覚えてるよ。
ああ、俺のこと、見てくれてるヒト、
居るんだなって思った。
それから、凄くりんさんのこと、
意識してた」


りんさんが、少し恥ずかしそうに笑った。
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