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近くて遠い
第12章 善人か悪人か
「非難する前に彼女が怪我してないか心配するのが普通じゃないですかっ!?」
「っ………」
有川様はわなわなと唇を震えさせると脇にあったグラスを手で倒した。
パリンッ────
落ちたグラスもまた音を鳴らす。
「もう食事はいい!不愉快だ!!」
有川様はそう叫ぶとそのまま乱暴に扉を開けて、部屋から出てしまった。
「ふ…ぅ…」
張りつめた空気が有川様の退散でゆるむ。
まずい…
ちょっと言い過ぎたかも…
後で何を言われるかと思ったらブルッと寒気がした。
まぁ…でも…
私は立ち上がると茫然としているメイドさんに近付いた。
「怪我は…ないですか?」
近付けば一層、彼女のあどけない顔が際立つ。
「真希様……」
よほど怖かったのだろう、彼女は目に溜めていた涙をポロポロと流し始めた。
「真希でいいよ。私、あなたと多分年変わらないから…それより、怪我は?」
震える彼女の手を取りながら、顔を覗くと、彼女はより一層泣き始めてしまった。
「申し訳ありませんっ…私なんかのために…」
泣きながら頭を下げる彼女が健気で愛しく思えた。
大丈夫だから…といいながら彼女の背中をさすった。
こんなに一生懸命な子を、お皿を割ったくらいで…
短気にもほどがある。
「真希様…破片を片付けますのであちらへ」
顔を上げると優しく微笑む古畑さんがいた。
「すみませんっ…
私がやりますからっ」
彼女も古畑さんの言葉に顔あげ、懸命にこぼれ落ちる涙を拭うと、割れたお皿の破片を拾い始めた。
バラバラに崩れたお皿…
「私も手伝います」
「そんなっ!いけません!私が割ったものですし…」
しゃがんで破片を拾おうとした私の手を彼女が止めた。
「これは使用人の仕事ですので…」
使用人…
彼女が使用人であるなら、
3千万で自分の人生を売った私は何になるのだろうか。
「私だって変わらないから…」
壊れたお皿が自分と重なって、気付いたら、彼女のためというより、"自分のため"に破片を拾っていた。
「っ………」
有川様はわなわなと唇を震えさせると脇にあったグラスを手で倒した。
パリンッ────
落ちたグラスもまた音を鳴らす。
「もう食事はいい!不愉快だ!!」
有川様はそう叫ぶとそのまま乱暴に扉を開けて、部屋から出てしまった。
「ふ…ぅ…」
張りつめた空気が有川様の退散でゆるむ。
まずい…
ちょっと言い過ぎたかも…
後で何を言われるかと思ったらブルッと寒気がした。
まぁ…でも…
私は立ち上がると茫然としているメイドさんに近付いた。
「怪我は…ないですか?」
近付けば一層、彼女のあどけない顔が際立つ。
「真希様……」
よほど怖かったのだろう、彼女は目に溜めていた涙をポロポロと流し始めた。
「真希でいいよ。私、あなたと多分年変わらないから…それより、怪我は?」
震える彼女の手を取りながら、顔を覗くと、彼女はより一層泣き始めてしまった。
「申し訳ありませんっ…私なんかのために…」
泣きながら頭を下げる彼女が健気で愛しく思えた。
大丈夫だから…といいながら彼女の背中をさすった。
こんなに一生懸命な子を、お皿を割ったくらいで…
短気にもほどがある。
「真希様…破片を片付けますのであちらへ」
顔を上げると優しく微笑む古畑さんがいた。
「すみませんっ…
私がやりますからっ」
彼女も古畑さんの言葉に顔あげ、懸命にこぼれ落ちる涙を拭うと、割れたお皿の破片を拾い始めた。
バラバラに崩れたお皿…
「私も手伝います」
「そんなっ!いけません!私が割ったものですし…」
しゃがんで破片を拾おうとした私の手を彼女が止めた。
「これは使用人の仕事ですので…」
使用人…
彼女が使用人であるなら、
3千万で自分の人生を売った私は何になるのだろうか。
「私だって変わらないから…」
壊れたお皿が自分と重なって、気付いたら、彼女のためというより、"自分のため"に破片を拾っていた。