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近くて遠い
第14章 異変
──────…
様子がおかしい…
身体に異変を感じた光瑠は自身の手のひらを見た。
震えている…?
その手は確かに震えていた。
光瑠はその手をゆっくり握った。
身体から何か溢れているような感覚。
自分が少し怖かった。
あの日、
気が付いたら、真希の母の部屋の前に立っていた。
何がそうさせたのかは分からない。
正直、
病人を見るのは苦手だった。
病院に通ったあの不安な日々を思い出してしまうから…
にも関わらず、
光瑠はドアノブに手をかけた。
真希が自分の身を呈してまで、守ったもの。
それに興味があったのか
それとも
真希が喜んでくれるかもと思ったのか
……両方なのか。
鼻を掠める薬品の香り
頬も痩けて
息をするのも精一杯なその身体。
少しでも触れれば消えてしまうのではないかと思うくらい、はかない…
『あなたが……有川さん…ね?』
『…有川…光瑠と申します…』
辛うじて出した声に、
彼女は微笑んだ。
あれがいけなかった。
あの日、あの部屋に行かなければ…。
光瑠は握った拳に力を入れた。
『勝手に……婚約を決めて、すみませんでした…』
どうしてそんな偽善者みたいな事を言ったのか。
今でもそれはよく分からない…
『あら…
確かに最初はびっくりしたけど…でももう気にしてません。真希だけじゃなくて私や隼人まで引き取って下さって、本当に感謝しているわ。
ありがとう…有川さん…
真希を……どうか幸せにしてやってください…』
光瑠を恩人として見つめる目、
子を愛す母の目、
弱点をつかれたように光瑠の心は崩れていった。
様子がおかしい…
身体に異変を感じた光瑠は自身の手のひらを見た。
震えている…?
その手は確かに震えていた。
光瑠はその手をゆっくり握った。
身体から何か溢れているような感覚。
自分が少し怖かった。
あの日、
気が付いたら、真希の母の部屋の前に立っていた。
何がそうさせたのかは分からない。
正直、
病人を見るのは苦手だった。
病院に通ったあの不安な日々を思い出してしまうから…
にも関わらず、
光瑠はドアノブに手をかけた。
真希が自分の身を呈してまで、守ったもの。
それに興味があったのか
それとも
真希が喜んでくれるかもと思ったのか
……両方なのか。
鼻を掠める薬品の香り
頬も痩けて
息をするのも精一杯なその身体。
少しでも触れれば消えてしまうのではないかと思うくらい、はかない…
『あなたが……有川さん…ね?』
『…有川…光瑠と申します…』
辛うじて出した声に、
彼女は微笑んだ。
あれがいけなかった。
あの日、あの部屋に行かなければ…。
光瑠は握った拳に力を入れた。
『勝手に……婚約を決めて、すみませんでした…』
どうしてそんな偽善者みたいな事を言ったのか。
今でもそれはよく分からない…
『あら…
確かに最初はびっくりしたけど…でももう気にしてません。真希だけじゃなくて私や隼人まで引き取って下さって、本当に感謝しているわ。
ありがとう…有川さん…
真希を……どうか幸せにしてやってください…』
光瑠を恩人として見つめる目、
子を愛す母の目、
弱点をつかれたように光瑠の心は崩れていった。