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近くて遠い
第14章 異変
そんな光瑠に

真希は追い討ちをかけた。

皿を割った使用人を庇おうとする真希の姿に

自分の汚れを示されたような気がした。


もう、壊れてしまいそうだった。


皆が望むものは、持っている──

恐れるものはない。


光瑠は自分を保とうと必死だった。


なのに、

あいつは…

真希は…


また、俺を壊そうとしてきた──


──────三千万で…身体は買えても…心は買えない……

──────横暴で人の事を考えないあなたに…誰も笑顔は向けないわっ…


何故、あいつはこんなにも俺を苦しめる…?


何故、黙って言うことをきこうとしない…?


何故、あいつは……
こんなに俺の心をかき乱そうとする…?


むしゃくしゃして、

光瑠はその日は一睡もしなかった。


次の日も周りの人間に当たり散らした。



それでも頭から離れない…


無理矢理脱がせたワンピースの下からのぞいた
柔らかくて白い肌…


アルコールで上気した頬…

惑わせてくる涙を溜めた瞳…


真希の身体を思い浮かべながら、


光瑠は
溜まった欲を吐き出すためだけに、近くにいたメイドを無我夢中で抱いた。



メイドを抱くのは初めてじゃない。


いつも何となく女を抱きたくなったら抱く。



最初は嫌がる女たちも、しばらくすれば淫らに声を出して、挙げ句自ら腰を振りだす。


そんなものだ──


だから、
光瑠にとってそれは特別なことでも何でもなかった。

欲を吐き出して、快感を得られればいい。


ただの性欲処理だ。



なのに、その日はいくらメイドを抱いても、
イラつきが収まらなかった。


自分を欲してこない真希とどう接したら良いのだろうか。


傍に置ければそれでいいと思っていただけなのに…


貪欲になっていく気持ち。


うまくいかないことへの苛立ち。



こんなに

近いのに、
遠い…



悠月だったら…

『光瑠』と名前を呼んで、笑いかけてくれるだろうに…



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