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近くて遠い
第15章 芽生え
──────…


吸い込まれるように


唇が重なった。


ドキドキしすぎて心臓が壊れそう…


私はそんなことを思いながら、ギュッと目を瞑ってその瞬間を感じていた。


そろそろ舌が入ってくる…


と思った瞬間、光瑠さんは触れるだけのキスをしてゆっくりと唇を放した。


え……?


不思議に思って私は光瑠さんを見つめた。


「そんなに力むな。今日は抱かない。」


優しく囁かれた言葉にトクンと血が一気に巡る。


抱かないのか…


少し残念に思ってしまった自分に私は赤面した。


そんな私の頭の上に優しく手のひらが乗る。


「布団も被らず倒れこんでたんだ、疲れてるんだろう。もう寝ろ。」


「え……?」



布団も被らず……?


やっぱりベッドの縁に座ってから記憶がないし…

……もしかして、光瑠さんが?


あまりに優しい視線にどうしていいか分からない。



「どうした。」


「っ…」


整った顔が私をのぞきこむ。


こんなにかっこよくて綺麗な上に、優しかったらおかしくなってしまう…


「やっぱりっ…急に優しすぎですっ…」


戸惑う私に光瑠さんは困った顔をした。


「そんなつもりはないが…前の方がよかったらそうするぞ」



「まさかっ!!!!」


食い気味で、しかもあまりに大きな声を出してしまった私は自分で口を塞いだ。

「……ふっ…ハハハっ」


そんな私を光瑠はしばらく目を丸くした後、口元を緩ませて笑った。


その笑顔に胸がキュンとする。


っ……笑った方がいいって…それは光瑠さんの方だ…


何をするでもない。


ただベッドに座って、会話とも言い難い言葉を交わしているだけ。


それなのに、私はとても心が穏やかだった。









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