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近くて遠い
第16章 朝食の味
──────…

ようやく光瑠さんの部屋の前に着いた私は少しドキドキしながら扉をノックした。


しかし中から幾度扉を叩いても一向に返事がない。



まだ寝てるのかな…?



「失礼します…」


私は小さな声でそう呟いてゆっくりと扉を開けた。


うわぁっ、広い…


初めて来た光瑠の寝室は自分のと比べると二倍ほどあって、腰が抜けそうだった。


私の部屋も十分広いけど…ここは本当に広い…



驚きながら、ハッとしてベッドを見るが、そこには乱れた布団があるだけで光瑠さんの姿はない。


「あれ…?」


思わず声を上げると、部屋の奥から、キュッと蛇口を捻るような音が響いた。




不思議に思って私は、とりあえず朝食のワゴンを部屋の中に入れてから、それを置いて奥の方に進んでいった。



「光瑠……さん…?」


微かに音のする方に近付いていくとまたベッドの奥にまた新たな扉があった。


ここかな?


私はゆっくりとそのドアノブに手をかけたその瞬間、

力も入れてないのにノブが突然下がって、

扉が勢いよく開いた。



「きゃっっ!」


突然のことに驚いて、私はその場でしりもちをついてしまった。


いっ…いたい…



「なんだ、覗きか」



涙目になりながら、腰をさすっていると上から聞き覚えのある低い声が降ってきた。


「へぇっ?覗き……?って、わっわっ…!!」


顔を上げると、

シャワーを浴びたばかりの光瑠さんが、腰にタオルを巻き付け、ポタポタと髪から水滴を垂らした状態で立っていた。



「ごっ、ごめんなさいっ」

ほぼ全裸のその姿に驚いた私は顔を手で覆い隠して謝った。


ドキドキドキドキ……


恐ろしく早まる心拍数に顔が紅くなるのが分かる。


「こんな朝早くにどうした。」


目を瞑り、ゆっくり立ち上がろうとする私に平然と光瑠さんが、話し掛ける。


「いやっ、あの…」


目を瞑っている上に、腰が抜けたせいで、うまく立てない私は、光瑠さんにはさぞ滑稽な姿に写っているのだろうと思うと、さらに顔が紅くなる。


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