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近くて遠い
第17章 偵察
「ちがっ…昨日のっ…ぐっ…」
「昨日の?」
光瑠さんは少しだけ腕を緩めて、涙目になる私を見た。
「昨日の…光瑠さんとの会話思い出してっ…」
恥ずかしいし、苦しいし、で私は顔から火が出そうになった。
「………」
私の言葉を聞いて光瑠さんは黙ったまま何事もなかったかのように外に顔を向けた。
どうして何も答えてくれないんだろう…
また一抹の不安が私を襲って心をさらっていこうとする─────
「いつも、そんな感じなんですかっ…?」
向かいから聞こえた少し高めの声に私はビクッと身体を震わせ、視線を移すと、
酒田さんが赤面しながらこちらをチラチラと眺めていた。
酒田さんがいるのをすっかり忘れてたいた、私は、あ、あ、と言葉にならない声を発して狼狽えた。
光瑠さんも、酒田さんの存在に気付くと微かに慌てたようにして、私の腰から腕を離した。
「そりゃ…社長も変わりますよね…」
「っ……黙れっ!遅刻した分際で!」
光瑠さんは都合が悪くなったのか、先ほど強く咎めなかった遅刻を引き合いに出して酒田さんを黙らせた。
恥ずかしさが抜け切らない私は、なるべく顔が紅いのを悟られないように外を眺める。
……往来する人々をみてハッとした。
思えば、外に出たのは久しぶりだ。
有川邸は広いから、外に出ていないということに気付かなかった…
なんて、不思議な人生なんだろう。
学校に通っていた時の同じような毎日がひどく遠い昔のように感じる。
すべて、お父さんがいなくなったことで変わってしまった…
私は溢れそうになる涙を堪えようとグッと歯を食いしばった。
なぜお父さんは、去ったのだろう。
私は厳しいけどたまに優しいお父さんが好きだった。
その愛を疑った事はない。
だけど…
お父さんは去った。
「昨日の?」
光瑠さんは少しだけ腕を緩めて、涙目になる私を見た。
「昨日の…光瑠さんとの会話思い出してっ…」
恥ずかしいし、苦しいし、で私は顔から火が出そうになった。
「………」
私の言葉を聞いて光瑠さんは黙ったまま何事もなかったかのように外に顔を向けた。
どうして何も答えてくれないんだろう…
また一抹の不安が私を襲って心をさらっていこうとする─────
「いつも、そんな感じなんですかっ…?」
向かいから聞こえた少し高めの声に私はビクッと身体を震わせ、視線を移すと、
酒田さんが赤面しながらこちらをチラチラと眺めていた。
酒田さんがいるのをすっかり忘れてたいた、私は、あ、あ、と言葉にならない声を発して狼狽えた。
光瑠さんも、酒田さんの存在に気付くと微かに慌てたようにして、私の腰から腕を離した。
「そりゃ…社長も変わりますよね…」
「っ……黙れっ!遅刻した分際で!」
光瑠さんは都合が悪くなったのか、先ほど強く咎めなかった遅刻を引き合いに出して酒田さんを黙らせた。
恥ずかしさが抜け切らない私は、なるべく顔が紅いのを悟られないように外を眺める。
……往来する人々をみてハッとした。
思えば、外に出たのは久しぶりだ。
有川邸は広いから、外に出ていないということに気付かなかった…
なんて、不思議な人生なんだろう。
学校に通っていた時の同じような毎日がひどく遠い昔のように感じる。
すべて、お父さんがいなくなったことで変わってしまった…
私は溢れそうになる涙を堪えようとグッと歯を食いしばった。
なぜお父さんは、去ったのだろう。
私は厳しいけどたまに優しいお父さんが好きだった。
その愛を疑った事はない。
だけど…
お父さんは去った。