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近くて遠い
第20章 探り合い
────────…


「光瑠さん…」


光瑠さんの瞳が怯えたように揺れていた。



辛そうに歪む、美しい顔──



「どこにも…

行かないでくれ……」





そう言って、光瑠さんは私を抱き締めた。



朝と同じ。


彼は怯えてる。


そして、不器用に、私を欲している…







「…………結婚しよう…」





その言葉に私は抱き締められながら目を見開いた。




──────真希の花嫁姿、見たいなぁ



そしてふと、お母さんの弱々しい言葉が頭をよぎる。





「………結婚しよう…」




黙った私をより強く抱き締めて震えた声で、光瑠さんが再び呟く。


光瑠さん…



私、とても不安なの…


でも…




「……はい…」




例え『愛してる』という言葉をあなたが発しなくても



そこには



愛があるはずだと



そう信じて、




私は返事をした。






「……本当か。」



身体を少しだけ離して光瑠さんが私を見下ろす。



私たちは出会いから普通と違う。


選択の余地なくお金で買われ、望んだ生活でもなかった。


不安で

怖くて

悲しくて…


希望の見えない日々に絶望して…


けど、たまに見せる光瑠さんの優しさに触れた今


私は、信じる事ができる…


いや、信じたい…


きっといつか、


「愛してる」って言ってくれると…



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