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近くて遠い
第21章 近くて遠い
指を差したって、彼は見えない……


振り返ると、要さんは少し切なそうに笑っていた。


「すみません…私…」



「いいえ、大丈夫です。視覚って当たり前すぎて、失わないと分からないものです。」



その言葉に胸が締め付けられた。


本当に、目が見えないんだ…


こんなに、綺麗な目をしてるのに…。



私は再び要さんの手を握った。



「こっちです。」



そう言って、要さんはステッキを持ちながら、私に導かれてベンチに座った。



「ありがとうございます…」


「いいえ…」



背中に当たる日がとても暖かかった。



「お姉ちゃん見てこれ!!」


要さんの隣に腰を降ろすと、隼人が箱を持って私に駆け寄る。



「チョコ……?」



そこには色んな形の可愛らしいチョコレートがたくさん並んでいた。



「食べていいっ!?」



「えっ…うん、じゃあ要さんにお礼を言って。一個だけね。ほら、ちゃんと座って。」



私がそういうと、隼人は私とは逆の要さんの隣に腰を降ろした。



「お兄ちゃん、かなめっていうの…?」



隼人の問いかけに、要さんはゆっくりと身体を向けた。



「そうだ。君は…隼人だな。」



「うん!!かなめありがとう!!」




「はっ、隼人!だから呼び捨ては…」



嬉しそうにチョコをほうばろうとする隼人を叱ろうとすると、要さんが口を大きく開けて笑った。



「ハハハッ!面白いな、じゃあ俺も隼人って呼ぶな。」


その口調に胸がドキッとした。



初めて要さんに会った時、彼はこういう口調だった。



「あ、あと、ちょっとアルコールが入ってるのがあるから気を付けろよ。」



言って要さんが隼人の頭を再び撫でる。




変わってない。



やっぱり


彼は、あのとき私が出会った優しい要さんだ──

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