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近くて遠い
第23章 信頼関係
───────また、逃げ出したくなったら、いらしてください…
あの日の少女に似た声が頭の中で鳴り響く──
「少し休憩してもいいか」
「えっ…あぁもちろんです。」
要の問い掛けに再び酒田が気を使って返事をする。
要はステッキを掴むと部屋から出て、会社の外へと向かった。
有川商事は社長の屋敷の敷地の中にあるような造りになっている。
この前真希と出会った南の庭は会社よりにあって、共有地のような感じになっていた。
会社の外に出ようとしたところで、要は足を止めた。
やめておこう。
あれは社交辞令にすぎない…
それに今俺は、あの日の少女に会いに行くような気持ちでいる──
「はぁ…」
冷たい空気を感じながら要は小さく溜め息をついて、踵を返した。
社長の大事な人に、自分の大事な人を重ねるなんてそんなバカらしいこと…
「お、関根」
前方から丁度通り掛かった光瑠が要を呼び止めた。
不意打ちをくらった要は驚きのあまりステッキを落とした。
「あ、おい。」
光瑠は要の足下に転がったステッキを掴むとそれを探そうと手を振り回す要の肩を叩いた。
「社長…」
「大丈夫か、無理するな。」
そう言って光瑠は要の手にステッキを渡した。
「すみません…」
頭を下げる要を光瑠は少し切な気に見つめる。
要はまたそんな光瑠の空気を察知していた。
憐れまれる事に胸がズキズキと痛んで、また後ろ向きな気持ちで溢れる。
「無理してここに来る必要はない。じっくり休んでから──」
「休んでも目が見えるようになる訳じゃありません。」
光瑠の言葉を遮って要が言った。
何を自分は今さら苛立っているのか…
しかも社長に向かって…
あの日の少女に似た声が頭の中で鳴り響く──
「少し休憩してもいいか」
「えっ…あぁもちろんです。」
要の問い掛けに再び酒田が気を使って返事をする。
要はステッキを掴むと部屋から出て、会社の外へと向かった。
有川商事は社長の屋敷の敷地の中にあるような造りになっている。
この前真希と出会った南の庭は会社よりにあって、共有地のような感じになっていた。
会社の外に出ようとしたところで、要は足を止めた。
やめておこう。
あれは社交辞令にすぎない…
それに今俺は、あの日の少女に会いに行くような気持ちでいる──
「はぁ…」
冷たい空気を感じながら要は小さく溜め息をついて、踵を返した。
社長の大事な人に、自分の大事な人を重ねるなんてそんなバカらしいこと…
「お、関根」
前方から丁度通り掛かった光瑠が要を呼び止めた。
不意打ちをくらった要は驚きのあまりステッキを落とした。
「あ、おい。」
光瑠は要の足下に転がったステッキを掴むとそれを探そうと手を振り回す要の肩を叩いた。
「社長…」
「大丈夫か、無理するな。」
そう言って光瑠は要の手にステッキを渡した。
「すみません…」
頭を下げる要を光瑠は少し切な気に見つめる。
要はまたそんな光瑠の空気を察知していた。
憐れまれる事に胸がズキズキと痛んで、また後ろ向きな気持ちで溢れる。
「無理してここに来る必要はない。じっくり休んでから──」
「休んでも目が見えるようになる訳じゃありません。」
光瑠の言葉を遮って要が言った。
何を自分は今さら苛立っているのか…
しかも社長に向かって…