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近くて遠い
第23章 信頼関係
「フッ…随分しゃれたことおっしゃいますね…」
「っ…黙れっ…!」
元気がないと思った部下を励ますつもりで言った言葉に思わぬ返事が返ってきて、光瑠は赤面していた。
「社長みたいな方しか言えないセリフですね。」
クククと喉を鳴らす要を光瑠は落ち着かぬ様子で眺める。
「……ありがとうございます」
要が笑うのをやめて頭を下げるので余計に光瑠は恥ずかしくなって閉口していた。
だが、さっきの言葉はお世辞でも何でもなく、光瑠が本当に思ったままのことだった。
今まで光瑠の右腕としてどんな仕事でもこなしてきていた要は、まさにこの会社の"要"となる人物…
不運な事故に巻き込まれたとはいえ、手離すつもりなんか到底ない。
新しいプロジェクトに熱意を持って尽力してくれたのも要であり、光瑠に初めて仕事のやり甲斐というものを教えたのは要なのだ。
要は…恩人なのだとさえ光瑠は感じていた。
「では…」
そう言って去ろうとする部下を光瑠はジッと見つめる。
気になっていることがあった。
「あの少女は…見つかったか?」
その言葉に要が微かに顔を歪ませて首を横に振る。
この男にも幸せになってほしい。
そんな温かな気持ちが芽生えるようになったのは、真希とふれあうようになったからだろうか…