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近くて遠い
第25章 符合
───────…
「……最近、自分が分からなくてね、そうか、見破られましたか…かっこわるいですね…」
しばらく顔を伏せていた要さんは小さな声でそう言った。
やっと、本当の要さんを見た気がした。
前向きで、優しくて…それは素敵だったけど、どこか無理しているように見えた要さんの姿が、今吹っ切れたように、感じた。
「かっこわるくなんか、ないですよ。それが普通です。」
私がそういうと、要さんは、そうか──と呟いた。
私はそんな要さんを見ながら、あの日の恩返しをしているような気持ちになっていた。
「やっぱり…あなたといると…」
要さんの上に重ねていた自分の手が今度は逆にギュッと握られて、ドキッと胸が鳴った。
そして要さんは何かを言いかけたあと、ゆっくりとその手を離した。
「………」
言葉の続きが聞きたくて、それを尋ねたいと思ったけれど、同時に尋ねてはいけないような気もして、私は黙っていた。
「すみません…」
「…どうして謝るんですか?」
何故か要さんがもらした謝罪の言葉に胸が痛んだ。
「いえ…何となく、あなたが似ているから…身体が勘違いしてしまって、たまに意思とは反したことをしてしまう…」
意思とは反したこと──
それが何を指すのか…
そして…
「どなたに…似ているんですか?」
私の言葉を聞いて、要さんがフッと笑って、顔を向けた。
「とてもバカらしい話ですが、聞いて下さいますか?」
バカらしい話…
「もちろん。」
私は何でもいいから、要さんの事をもっと知りたいと思って返事をした。
私の返事を聞いて、要さんは再び前を向くと、遠くにその視線を投げた。
「この年齢になって、何を、と思われるかも知れませんが…ある少女に…一目惚れしましてね。」
「っ……」
その言葉に思わず息をのんだ。
また一目惚れの話になるなんて…
そしてすぐに、話を聞くなんて言ったことを私はひどく後悔した。
「……最近、自分が分からなくてね、そうか、見破られましたか…かっこわるいですね…」
しばらく顔を伏せていた要さんは小さな声でそう言った。
やっと、本当の要さんを見た気がした。
前向きで、優しくて…それは素敵だったけど、どこか無理しているように見えた要さんの姿が、今吹っ切れたように、感じた。
「かっこわるくなんか、ないですよ。それが普通です。」
私がそういうと、要さんは、そうか──と呟いた。
私はそんな要さんを見ながら、あの日の恩返しをしているような気持ちになっていた。
「やっぱり…あなたといると…」
要さんの上に重ねていた自分の手が今度は逆にギュッと握られて、ドキッと胸が鳴った。
そして要さんは何かを言いかけたあと、ゆっくりとその手を離した。
「………」
言葉の続きが聞きたくて、それを尋ねたいと思ったけれど、同時に尋ねてはいけないような気もして、私は黙っていた。
「すみません…」
「…どうして謝るんですか?」
何故か要さんがもらした謝罪の言葉に胸が痛んだ。
「いえ…何となく、あなたが似ているから…身体が勘違いしてしまって、たまに意思とは反したことをしてしまう…」
意思とは反したこと──
それが何を指すのか…
そして…
「どなたに…似ているんですか?」
私の言葉を聞いて、要さんがフッと笑って、顔を向けた。
「とてもバカらしい話ですが、聞いて下さいますか?」
バカらしい話…
「もちろん。」
私は何でもいいから、要さんの事をもっと知りたいと思って返事をした。
私の返事を聞いて、要さんは再び前を向くと、遠くにその視線を投げた。
「この年齢になって、何を、と思われるかも知れませんが…ある少女に…一目惚れしましてね。」
「っ……」
その言葉に思わず息をのんだ。
また一目惚れの話になるなんて…
そしてすぐに、話を聞くなんて言ったことを私はひどく後悔した。