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近くて遠い
第26章 糸の綻び
「かしこまりました…」


愛花ちゃんは私の返事を聞くと、心配そうに私を見ながら、隼人を連れて、廊下に消えていった。



「…私の部屋に──」



「真希さん。」


急に部屋に導こうと、掴んだ手を引かれて、気付いたら要さんの腕の中に私はいた。




「か、要さんっ!?」



びっくりして声を上げるが、要さんは抱き締める力を弱めなかった。



「何があったんですか。」



力強い声が密着した身体に振動として伝わる。



「で、ですから何も──」



「言ったはずです。視覚がなくなると他の感覚が鋭くなると。あなたは今、嘘を言っている。」


その言葉に私は目を見開いた。



「嘘なんか──」


「先ほど、無理するなと僕に言ったのはあなただ。」


堪えていた涙が、容易く頬を流れた。



「っ…………」


「真希さん…」



優しい言葉と腕が同時に私を包み込んだ。


愛する人の死を覚悟するなんて、そんなことが出来る人がいるのだろうか?


私には出来ない…


覚悟なんて…


お母さんの死を何もせずに待つなんて…



やっぱり、光瑠さんを呼べば良かった…



「僕がいますから。大丈夫です。」


私の心の声が聞こえたかのように要さんが囁いた。


そして赤子をあやすように優しく私の髪を撫でた。




弱った私にその言葉は救いだった。


自分の立場とか、彼の立場とか、考える余裕なんか少しもなく、しばらくの間、要さんの腕の中で静かに泣いていた。
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