この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
近くて遠い
第26章 糸の綻び
「かしこまりました…」
愛花ちゃんは私の返事を聞くと、心配そうに私を見ながら、隼人を連れて、廊下に消えていった。
「…私の部屋に──」
「真希さん。」
急に部屋に導こうと、掴んだ手を引かれて、気付いたら要さんの腕の中に私はいた。
「か、要さんっ!?」
びっくりして声を上げるが、要さんは抱き締める力を弱めなかった。
「何があったんですか。」
力強い声が密着した身体に振動として伝わる。
「で、ですから何も──」
「言ったはずです。視覚がなくなると他の感覚が鋭くなると。あなたは今、嘘を言っている。」
その言葉に私は目を見開いた。
「嘘なんか──」
「先ほど、無理するなと僕に言ったのはあなただ。」
堪えていた涙が、容易く頬を流れた。
「っ…………」
「真希さん…」
優しい言葉と腕が同時に私を包み込んだ。
愛する人の死を覚悟するなんて、そんなことが出来る人がいるのだろうか?
私には出来ない…
覚悟なんて…
お母さんの死を何もせずに待つなんて…
やっぱり、光瑠さんを呼べば良かった…
「僕がいますから。大丈夫です。」
私の心の声が聞こえたかのように要さんが囁いた。
そして赤子をあやすように優しく私の髪を撫でた。
弱った私にその言葉は救いだった。
自分の立場とか、彼の立場とか、考える余裕なんか少しもなく、しばらくの間、要さんの腕の中で静かに泣いていた。
愛花ちゃんは私の返事を聞くと、心配そうに私を見ながら、隼人を連れて、廊下に消えていった。
「…私の部屋に──」
「真希さん。」
急に部屋に導こうと、掴んだ手を引かれて、気付いたら要さんの腕の中に私はいた。
「か、要さんっ!?」
びっくりして声を上げるが、要さんは抱き締める力を弱めなかった。
「何があったんですか。」
力強い声が密着した身体に振動として伝わる。
「で、ですから何も──」
「言ったはずです。視覚がなくなると他の感覚が鋭くなると。あなたは今、嘘を言っている。」
その言葉に私は目を見開いた。
「嘘なんか──」
「先ほど、無理するなと僕に言ったのはあなただ。」
堪えていた涙が、容易く頬を流れた。
「っ…………」
「真希さん…」
優しい言葉と腕が同時に私を包み込んだ。
愛する人の死を覚悟するなんて、そんなことが出来る人がいるのだろうか?
私には出来ない…
覚悟なんて…
お母さんの死を何もせずに待つなんて…
やっぱり、光瑠さんを呼べば良かった…
「僕がいますから。大丈夫です。」
私の心の声が聞こえたかのように要さんが囁いた。
そして赤子をあやすように優しく私の髪を撫でた。
弱った私にその言葉は救いだった。
自分の立場とか、彼の立場とか、考える余裕なんか少しもなく、しばらくの間、要さんの腕の中で静かに泣いていた。