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第30章 三つの想い

───────…

真希の声に光瑠は背を向けたまま眼を見開いた。


解放…？


俺は、真希を拘束してた…？


光瑠は自分の白いジャケットの払い残した雨粒を見つめた。



「三千万円と……お母さんの治療費は一生かけて返しますっ…だから…だからっ…」



もう構わないで───



真希の言葉が光瑠の心に鋭く突き刺さる。



今までの真希が見せた笑顔や

自分の胸を高鳴らせた言葉や仕草は


純粋に自分に向けられたものではなく

すべて母親のための嘘だったのか…？



光瑠は振り返って要の腕の中にいる真希の瞳を見つめた。



その大きな瞳は濡れていて、紅く腫れた頬に涙が止めどなく流れていた。



真希……


そんなにも泣くほどに俺が憎いか…？




ずっとその小さな胸の中で

関根を想っていたのか……？



どこにも行かないと言ったのも、全部全部母親のためについた偽りだったのか…？




光瑠の中で裏切られた悲しみが憎しみへと変わっていった。



「……出ていけ」



光瑠は静かに声を発した。



ギュッと口を引き結んで真希を固く抱き締める要の定まらぬ瞳を見つめる。



「……金はいらない」



俺が欲しいのは



金じゃない。




そんなもの


腐るほど持っている。






「だから…二度と俺の前に現れるな」






光瑠はそう言い残して真希の顔を見ることなく部屋から出ていった。




耳に入ったのは、ううっと声をつまらせて泣く


真希の声だけだった。