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近くて遠い
第30章 三つの想い
いつかはバレる事だった。


初めて真希を見た時の衝撃を古畑は忘れることが出来ない。


悠月の身代わりとして、光瑠が連れてきたのだろうということは容易に分かった。


だけれども、真希は悠月じゃない…


屋敷の皆が光瑠を恐れ、いつクビになるかと怯えながら生活しているなか、気丈に振る舞っていたあの強さ。


使用人にも分け隔てなく接していたあの優しさ。


家族を想う温かな心に、何事にも一生懸命な姿勢…。




自分だけでなく、光瑠も "真希" 自身を感じていたはずだと思っていた。




「光瑠様…真希様は──」



「黙れ。」



悠月のことを話してしまった責任を感じて、古畑がそれを伝えようとすると、光瑠は鋭く古畑を制した。




「ですが、お伝えしたい事が──」



「その名前を…その名前を二度と俺の前で出すな。」



虚ろだった目が怒りで鋭く光る。


やっと到来した幸せのはずだった。


だがそれは脆く崩れ去っていき、有川邸にまた悲しみが帯びる。



「……」



古畑は言葉をつまらせた。


自分では、彼を救えない…。


「突っ立ってないで、酒を持ってこい。」


光瑠はそう呟いて、片手で頭を抱えた。



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