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近くて遠い
第35章 過去と現在
「引っ越し……?」



ベンチに座りながら要は真希の言葉を返した。



「えぇ、数日後に…そんな離れたところじゃないんですけど…」



「へぇ…」



少しだけ、真希の顔が嬉しそうなのを要は気付いていた。



「父が…高校に通い直していいって、言ってくれて…春の編入試験に向けて少しずつ勉強始めてるんです。」


なるほど、と要はすぐに納得した。


大人っぽい仕草で、いつも落ち着いているから、忘れていたが、一般に当てはめればまだ高校生…


要は改めてそれを認識した。




「良かったですね。」


要は幸せそうな真希の姿を見るのが一番心安らいだ。


ずっと、色々な物を背負って、まだまだ普通の少女なのに、背伸びをしていたんだろう。


出会った時から、真希はそういう人だった。


「ありがとうございます。」


ニコリと真希が微笑む。


西に傾いた暖かな色をした太陽が、そんな真希の顔を照らしていた。



真希は、ふと隼人の方に顔を向け、下ろしたリュックを眉を潜めて見つめていた。

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