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不良の彼は 甘くて強引
第8章 S彼とお出掛け
その唇は震えていた、が、なおも語尾は強かった。
“最悪だわ…”
彼女がいるのはベッドの隅、部屋のコーナーだ。
逃げる場所はない。
それでも、ここで黙って抱かれるほど彼女のプライドは安くはなかった。
「──…」
「…っ…!!」
表情のないまま柚子を見つめる匠と、震えながらも匠を睨み返す柚子
まるで野犬に目を付けられた兎の構図──
いつ襲い出すかわからない野犬の威圧感が、可哀相な兎の震えを大きくしていた。
フッ……
その緊張感を先に破ったのは野犬の方だった。
「いい度胸だ…」
匠はベッドからでるとおもむろにテレビのスイッチを入れる。
「もういい、シャワーでも浴びてこい」
隅に縮こまった柚子に服を投げてよこす。
「ただし、待つのは10分だ。それ以上かかったら、風呂に襲いにいくぞ」
「は、はい!!!」
柚子は服をひっつかみバスルームへと駆け込んだ。
テレビでは朝の天気予報をしている。
「〇〇地区、降水確率は10%、雨の心配は殆どなく…」
キャスターの声をぼんやりと聞く匠。
“まだまだ甘いな、俺も”