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不良の彼は 甘くて強引
第8章 S彼とお出掛け

「怖かったぁ~」

バスルームに駆け込んだ柚子はほっと胸を撫で下ろす。

だがあまり時間はない。

10分…というと、髪を洗ってもいいと言うこと?

少し悩んだ柚子は急いでシャワーを浴び始めた。






「…何だ、髪も洗ったのか」

「だッ…! 駄目でしたか!?」


修一の持ってきた服を着用し、濡れた髪を拭きながらバスルームから出て来た柚子。


「面倒だな…」


匠はドライヤーを引っ張り出し柚子をテレビ前の椅子に座らせる。

そして風力は最大出力に。


強い熱風が顔にかかって熱い

柚子は大人しく髪が乾くのを待っていた。


こうしていると、ただの微笑ましいカップルのような光景。

だが彼女はまるで匠のペットになったような気分だった。


彼の機嫌を損ねないようビクビクしている自分

ついさっきは逆らったわけだけど……。




「出掛けるぞ」

柚子の髪があらかた乾くとドライヤーを片付けながら言った。


「出掛ける?でも…」


大学に行かないと…

そう言いかけた柚子は口ごもった。




「……ぁ」



大学に行ったら
あの沼田という男がいる。

また彼に会ったら…
何をされるかわからない。

あの苦しみにはもう堪えられない。


“ 怖い……!! ”


椅子に座ったままぐずぐずしている柚子。



その様子を見ていた匠には、彼女の頭の中はお見通しだった。



「あのメガネ男は、もうお前には関わらない」

「えッ…!?どうして…?」

「目障りだから脅しておいた」

「でもそんなこと…」

「俺を誰だと思っている」

「……」


…脅す?どういうことだろう。


彼はいつあの男と接触をしたのか、そもそも何でそんなに昨日の事について詳しいの……。

よくわからない、けど…

要するに
彼の言うことが真実ならば


そうならば、もうあんな事をされずにすむということ?

もうあんな苦しい思いをしなくていいの?



「──…」


「だが今日は大学は休め。わかったか?」




そう言って玄関でこちらを振り向いた彼は


少しだけ、ほんの少しだけ


輝いて見えた。




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