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不良の彼は 甘くて強引
第8章 S彼とお出掛け



──…



向かった先は都内のショッピングモールだった。


ここは柚子も何度か友人と来たことがある。

匠はどこを目指しているのだろうか…

そんな事を考えながらも聞くことができない柚子は黙って彼について歩く。


「……ハァ」


それにしても歩幅が違う…!

柚子にはお構いなしに歩く匠に、彼女は精一杯ペースを合わせていた。



唐突に匠の足が止まった。


振り向くと若干息が切れ気味の柚子。


「飯にするぞ」

「ハァ、ハァ……ご飯?」


ご飯──

そういえば、わたし昨日から何も食べてないんだ

そう思った瞬間


グゥゥーーー


「あッ……///」

彼女の腹が盛大に鳴った。



「…決まりだな」

匠はからかうような笑みを浮かべて店に入った。






入った店は随分とお洒落なホットドック専門店。

平日のためか客数は少なめ。


「好きなのを選べ」

そう言われても…

迷った柚子は、さっと見た感じ一番安かったトーストを選択。


店員にも命令口調な匠は手際よく注文を終え、二人はテーブル席につく。



「いただきます」

手を合わせた柚子はパクリとトーストを一口。


“美味しい…!!!”


シンプルなトーストだが、焼きたてのパンは噛むとバターの味がじゅわっと口いっぱいに広がった。

空腹だったこともありより美味に感じられる。


“とっても美味しい、美味しいんだけど……ッ


──さっきから…すごい視線を感じる”



匠はそんな柚子の様子を見ながら…というよりガン見して、ホットドックを口に運ぶ。


“た、食べにくい…”


柚子はトーストの味に関心しながらも、自分に向けられた遠慮の無い視線にビクつきながら朝食を済ませた。



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