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不良の彼は 甘くて強引
第9章 再会:出会い
────…
「取り敢えずこれ、飲みなよ」
駅中のカフェ。
店内に柚子を座らせ
そこで、男は彼女に珈琲を持ってきた。
「・・・・」
柚子は虚ろな目でコップからたつ湯気を見ている。
いけない
きちんとお礼、言わないと
「先程は…本当にありがとうございました」
テーブルについた男に向かって、心からの感謝を言葉で伝えた。
「──…」
男はうっすらと微笑んで
彼女の礼に応じた。
「遠くから、君の顔が少し見えてね…、とても苦しそうな顔だったから、何となくわかったよ」
「……」
やっぱり、痴漢されてることに気づいていたんだ
見られていたと思うと、恥ずかしくて仕方がない
“情けない…”
そんな彼女の心境を読みとったように、男は慌てて付け加えた。
「痴漢にあって、しっかり抵抗できる女の子なんて滅多にいないさ」
「…でも」
「本当だよ。そういうのは、周りの人間がいち早く見つけて助けてあげないと…ごめんね遅くなって、辛かっただろう」
「……!」
何て、優しい言葉だろう
その男のあまりの紳士っぷりに柚子は驚きを隠せない。
「まぁいいから…珈琲、飲みなよ。冷めたら勿体ない」
そういって彼は自分の珈琲を飲み始めた。
それを見て、柚子もコップを口に運ぶ。
口から伝わる珈琲の温かさに彼女は少し落ち着きをとり戻し、いつの間にか震えも収まっていた。