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不良の彼は 甘くて強引
第10章 本心
そういえば数日前、ある女の人がわたしを訪ねてきた。
名前は…
たしか、九条さん、だったかな。
───…
「ねぇ、あなた」
ちょうど柚子がキャンパスを出ようとした時
背後から女の声に呼び止められた。
「・・・・?」
あなたというのが自分かどうかはわからないが、その女性はこちらを見ている気がする。
「わたしですか?」
聞き返す柚子の顔を逆に見返しながら、女性は柚子に近づいていった。
「……ああ うん、あなただわ!」
嬉しそうな顔…
でも怪しい
「……えーっと」
「ごめんなさいね ! …何のことかわからないでしょう?」
何かの勧誘でしょうか?
「この後時間ある?」
「この後……ですか?アルバイトが入ってて…」
申し訳なさそうに断る柚子。
するとその女性は自分の名刺を柚子に差し出した。
「わたしは、九条紗織と申します」
「九条さん…」
「あなたの名前だけ、教えてくれない?」
「あ、矢崎 柚子です」
相手の勢いに呑まれて、思わず教えてしまう。
「そう…なら、また違う機会に来ても良いかしら」
「はい、ぜひ」
柚子は普段の癖でそう笑顔で返した。