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不良の彼は 甘くて強引
第10章 本心
───…
「…そういえば、違う機会っていつだろう」
柚子は財布の中からあの時の名刺を取り出した。
九条紗織
ピアニスト…
「──…」
その名刺は決してごちゃごちゃした感じはないものの、どこか芸術的なデザイン。
勧誘にしては…あからさまにわたしだけを狙うのもしっくりこないし。
そうして、柚子はそれを丁寧に財布に戻した。
“……あッ、いけない、バイト行かなきゃ!”
時計を見た柚子は急いで家を出てアルバイトに向かう。
いくらかのアルバイトを探した後、最終的に彼女が選んだのは家庭教師だった。
その理由は…第一は時給の高さからだが──
特に柚子の通う大学の学生はなかなかに有り難い金額を支払われる。
生徒は女の子という条件で申し込み
それも認められ
中学、高校時代からよく友人に勉強を教えていた彼女にとって家庭教師はピッタリの仕事だった。
教える内容は
英語、国語、数学、日本史、世界史、化学
基本は英語だが、彼女の生徒は高2のため文系の柚子にも数学を教えることは十分に可能だった。
数Ⅲこそ習っていないもののそれ以外ならば、そこそこの理系にだって負けはしない。
“理系男子は、すぐ文系女子を下に見るけど”
それは、彼女にとって大事な誇りのひとつである。