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不良の彼は 甘くて強引
第10章 本心
それから数日
柚子は答えのでない自分の気持ちにモヤモヤしていた。
“わたし、匠さんが好き”
心の中で呟いてみる。
いや、有り得ない
これは絶対にない
好きという感情はない。
ただ──
恨みという感情もまたあるかどうかわからない。
不思議なものだ。
彼によってわたしの大学生活が一変したのは事実。
初めて犯された時は憎くて憎くて仕方がなかったのに…。
《匠がした事を許すことはできない》
紗織さんの言葉が脳裏に浮かぶ。
そう…だよね
許してはいけないわ。
好きになるなんて…問題外よ。
「──…ッ!! ─先生、問題!」
ドッキーン
「え?何!?」
「問題解き終わったって!」
「……あ」
柚子は今日も家庭教師のバイトに来ている。
ぼーっとしていた彼女は生徒にせかされ急いで答え合わせを始めた。
そこへ
ガチャ
「先生!わたしも質問があるの」
そう言って部屋に入ってきたのは、柚子の生徒の姉で今年受験の女の子。
柚子は時々そちらも教えることになった。立場上、別途授業料はかかってしまうが。
「この問題、学校の先生は捨て問だからってあまり解説しなくって」
そう言って彼女が差し出したのは確かになかなかの難易度の数学問題。
大学の中にはこのような「捨て問」を試験に出すところがある。
要は、解けそうかどうかを早めに見極めろという趣旨だ。
でも一応
文系学部の問題だし
少し目を通すが…??
全然わからない。
「わからなかったらいいよ…もう一回聞いてくるから」
「ごめんね…この問題借りててもいい?」
「うん、それコピーだから、どうぞ」
悔しい、何とか解きたい。
柚子はその問題を鞄に閉まった。