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不良の彼は 甘くて強引
第10章 本心



───…




講義後の人もまばらなその教室で、柚子は数学の問題に苦戦していた。


今日は大学から直接 家庭教師に行く予定だった。

だからその前にこの問題を片付けてしまいたい。


「…幾何的に解く方がいいのかしら」


その問題はまさに「捨て問」と呼ぶに相応しいものに感じられた。

だが、自分を頼った生徒のためにも何とかして解きたかった。



「やっぱり数式で──…、……?」


ん、何だか

廊下の方がうるさい



「…?」


いぶかしげに後ろに振り向く。



「…、…ッ!! わっ!!」


後方のドアを荒々しく開け入ってきた長身の男が、
そこから彼女を睨みつけていた。


そのまま柚子の方に向かってくる。



「…え?…え?」


柚子は座ったままパニックだったが、身体が固まって動けない。



男は彼女の元へくるとその腕を掴んだ。

少し息を切らしている。



「帰るぞ…!!」

腕を掴む手に力が入った。



そこで固まっていた柚子はようやく声を出す。



「えっ!? ちょっ…ちょっと待って下さい!!」


立とうとしない柚子に、男は問い掛けた。


「何をだ」


な、何か怒ってない!?

こわっ…


「だからっ、この問題…解かないと…!」

柚子は男の鋭い目を見ないようにしながら、恐る恐る言った。



「これを…!?」


明らかに苛ついている。

柚子はすっかり怯えていた。


呼吸を整えたその男は
彼女から問題を取り上げる。



「待ってろ…」


彼女の横の椅子を引っ張り出し席につくと、それだけ言っていきなり問題を解きにかかった。



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