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不良の彼は 甘くて強引
第11章 ベンチ
───…
次の日
講義が終わり夕時に近付く空模様のなか
心なしか殺気立った目をした匠は、ゆっくりとその足を法学科の方へと向けて歩いていた。
芝生の広場が見える。
しかしベンチなどない。
人もまばらなその場所の、隅の方に木々が陰をつくっているだけだった。
匠はそちらへ歩いていく。
木々に隠されたそこには確かに、一組のベンチと…
黒髪の女が。
「柚子…か」
その匠の呟きは彼女に届くには小さすぎた。
何やらノートを開いて勉強している。
集中した柚子は匠の存在に全く気づかぬようだった。
匠の目から先程までの苛立ちが消えていく。
ちょうど夕暮れ時──
温かな木洩れ日の下で
静かに座る彼女の後ろ姿。
「……」
このまま眺めていようか…
そんな思いが匠の胸に芽生え始めたことに
彼自身、動揺していた。