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不良の彼は 甘くて強引
第12章 浴衣祭り
「…!!」
見覚えあるな、この男。
「なにか言ったか、茶髪」
匠が余所見をしている隙に…
命拾いした男は足を引きずりながら逃げてゆく。
「…茶髪じゃない、三上だ」
「そうだったか、…俺のあとをつけていたのか?」
匠は翔の方に向き直った。
「ある女性から君のことを聞かされたんだ、それが真実なのかどうかはわからなかったけれど…」
匠の周りに横たわる男たちに目をやる。
「この目で確かめたからね」
「…だから何だと言うんだ」
溜め息をついた匠は依然として無表情だ。
「君が…矢崎さんを無理やり犯したという話は」
「……」
「本当なのかい」
「…ああ、本当だな」
平然と答える匠。
翔の目は怒りに揺れていた。
それは決してぎらついたものではなく
あくまで静かに目の前の男への怒りが表れていた。
「…ふ」
そして不意に、翔の頬が緩む。
「人の女をとるのは趣味じゃない、けれど…こうなったら話は別だね。……このまま君に彼女を渡すわけにはいかなくなった」
その言葉に
匠の表情が一瞬揺らいだ。
「彼女のような純粋な女性がこれ以上君の手で汚されるのは、我慢ならない」
「あいつは俺の所有物だ」
「彼女は物じゃない、──人だよ…!!」
誰も通らぬ小さな道
ひとつの電灯があたりを鈍く照らしている。
そんな静かな路地で
二人の男の睨み合いが続いていた。