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不良の彼は 甘くて強引
第12章 浴衣祭り
「綺麗にできたかしら…?」
柚子は鏡に映る自分を眺める。
《浴衣は自分で着れる女になりなさい》
それが彼女の母の方針のひとつだった。
理由は知らないが、こうして着付けることができたのもそのお陰だ。
頭上で丸く束ねた髪には白い髪飾りを
巾着の中にはハンカチや財布を入れて──
準備はすべて完了した。
時間もちょうどよい。
だが家を出ようとした時
ひとつだけ困ったことがあった。
「マスク…」
いつも通り付けようとした柚子。
でも浴衣にマスクは似合わない……。
それに、せっかくの浴衣姿
綺麗に見られたいと思わずにいられないのは、決して彼女だけではないだろう。
“どうしよう…”
マスクを付けていようが付けていまいが、周りの人間からしたら大した違いではない
そんな事はわかっている。
これは彼女の気持ちの問題だった。
“今日は、外してみよう”
柚子はマスクを玄関先に置いて、下駄を履き、もう一度服装を整えると家を後にした。