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不良の彼は 甘くて強引
第13章 けじめの時

「──…」

立ち去る匠の後ろ姿を柚子はしばらく眺めていた。

強引なやり方と相変わらずの脅し口調ではあったが、今日の彼は彼女の想像よりずっと優しかった。


匠の姿が人影に紛れ込み見えなくなる。



「あれ」


自分も帰ろうとした柚子は足下に落ちてあった黒いハンカチを見つけた。

拾い上げて眺めているとどこかしら見覚えがある。


たぶん匠さんのだ。

さっき落としたのね。


再び匠の去った方向を見るがそこにはすでに彼の姿はない。


以前匠の家から駅前のショッピングモールに行った時の記憶で、彼の家の場所はなんとなく覚えている。


“今出たばかりだから間に合いそうね”


後日渡すこともできたが、あまり遠くにも行っていない筈なので今届けることに。


柚子は浴衣の裾を少し上げてちょこちょこと走り出した。


駅を出て、角を曲がる。

思ったより人が多く見つけられるか不安になった。

どこまで行ったのか…
やはり男の足はなかなかに速い。



駅前の大通りから一本入るといくらか人影はなくなる。



“あ、いた…!! ”

遠くの方に匠の後ろ姿が見えた。



──…だが駆け寄ろうとした柚子は驚いて立ち止まった。




“誰かと話してる…?”


道端で立ち止まった匠の前方に人影が見える。


暗くてよく見えないがあれは…




「……紗織さん?」





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