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不良の彼は 甘くて強引
第13章 けじめの時

「やっぱり泣いている…」

「…先輩」


腕を掴んだのが翔だとわかり
柚子の怯えた表情が緩む。



「こ…こんばんわ…!」


どうにか笑顔を作るも、それはかえって逆効果だった。


一度緩んでしまった頬では胸の奥から押し寄せてくる悲しみをかみ殺すことができない。


懸命にせき止めていた涙が彼女の防波堤を決壊させ、堪えきれない嗚咽が喉の奥からもれてしまう。


そんな自分を隠すように、顔を伏せ翔に背を向ける柚子の肩が小刻みに揺れている。



「──…!」


翔はそっと彼女の腕を離した。


柚子は両手で顔を抑え溢れ出る雫を押し戻そうとする。


そんな柚子の姿が翔には耐えられなかった。





柚子の泣く理由はなんとなくわかる。

彼女が匠と祭りに来ていたと友人が言っていたからだ。





ギリッ...!




翔の顔が苦しげに歪む。



いったいあの男に何をされたというんだ…。


肩を震わせ泣く君を
本当は力一杯抱き締めてやりたい。


だが、今の俺にはそれができない…。



“ 君にとって俺はまだ ただの先輩だ ”



こんな状態の柚子をさらに戸惑わせる訳にはいかなかった。




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